Papers and Abstracts

論文・講演抄録

卵子体積が受精・発生能ならびに 出生児体重に及ぼす影響

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:辻 暖永・吉村 友邦・香ノ木 早紀・浅野 恵美子・福永 憲隆・浅田 義正

浅田レディースクリニック

Abstract

【目的】
実験動物を用いた研究では人為的に卵細胞質を大きくしても発生能は改善せず,むしろ低下することが報告されている.
またARTにおいて,凍結融解操作や移植胚の評価によって出生児体重が変動することが知られているが,卵子の体積が発生能や出生児体重に影響するか否かは未だ不明である.
そこで本研究ではヒトにおいてICSI 時の卵子体積が受精,その後の発生能ならびに出生児体重に及ぼす影響を後方視的に検討した.

【対象・方法】
受精および胚盤胞形成に関する検討は2017年1月~ 2月の間にICSIを施行し採卵時の妻年齢が30 ~ 35歳であった55症例973個を対象とした.
また,出生児体重に関する検討は2013年1月~ 2016年8月までにICSI 施行後Day1までEmbryoScope® で培養を行い,胚盤胞に到達した胚を凍結融解胚移植後,出産に至った506症例538周期を対象とした.
卵子直径はICSI後EmbryoScope®で培養を行い,最初に撮影された画像の直径を2点取り平均化することで算出した.
なお卵子体積は〔V=4/3πr3〕にて算出した.

【結果】
0PNおよび≧3PNを形成した卵子は2PNを形成した卵子と同等の体積であったが,1PNを形成した卵子の体積は2PNを形成した卵子と比較して有意に小さかった(746935.5μm3 vs. 777233.4μm3: p<0.05).2PN
胚のうち胚盤胞を形成しなかった卵子は胚盤胞を形成した卵子の体積より有意差はないものの小さい傾向が見られた(758077.2μm3 vs.770888.6 μm3: p=0.052).
更に2PNを形成した胚を卵子体積によって3区に分け胚盤胞発生率を比較したところ,体積が小さい区は中間区より有意に低く( 55.0% vs. 66.0%: p<0.05),また有意差はないものの大きい区より低い傾向があった(55.0% vs. 67.3%).
しかし,卵子体積と出生児体重に相関は無く(R2=0.038),先天性異常の発生にも影響は見られなかった.

【考察】
これらの結果から1PNを形成する卵子は体積が小さい傾向があり,また2PNを形成した胚でも体積の小さい卵子は胚盤胞形成率が低率であることが示された.
しかし,胚盤胞に達した胚の卵子体積は出生児体重に影響を及ぼさなかった.

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