Papers and Abstracts

論文・講演抄録

原因不明不妊とFOXO遺伝子との 関係について

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:山本 輝1)・山下 能毅2)・斎藤 奈津穂1)・林 篤史1)・林 正美1)・寺井 義人1)・大道 正英1)

1) 大阪医科大学 2) 宮崎レディースクリニック

Abstract

【目的】

FOXO(Forkhead Box O)はForkhead 転写ファミリーのサブグループであり,哺乳類ではFOXO1, 3, 4, 6が存在している.FOXOは細胞周期に極めて重要な相互作用を持っており,アポトーシスや細胞周期,抗酸化を調整する遺伝子の発現を編成している.不妊に関しては,FOXO1,FOXO3 が卵胞発育周期に関与していることがわかっており,FOXO3ノックアウトマウスでは早期に多くの卵胞,卵母細胞が活性化するが,発育できず,最終的にPOI,不妊に至ってしまうことが報告されている.ヒトにもFOXO の存在は証明されているが,どのような意義をもっているのかは解明されていない.我々はしばしば,明らかな不妊原因が見つからないにも関わらず,最終的にIVF-ET までstep upする原因不明症例に遭遇する.今回,我々はFOXOと臨床的パラメータ(FSH 基礎値,採卵数,受精率,妊娠率等)との関連性を原因不明症例で検討を行った.

【方法】

2012年7月から2013年10月まで当施設でIVF-ETを施行された32人(原因不明:14人,男性不妊:18人)を対象とした.適応条件として,①40歳未満②規則的な月経周期③血清AMH値:0.5ng/ml 以上④内分泌疾患なし,とした.除外条件は①内膜症等の卵巣腫瘍合併②卵巣腫瘍手術既往あり③卵巣機能不全を疑わせるFSH 高値,とした.採卵時に採取し
た主席卵胞から顆粒膜細胞を抽出,リアルタイムPCRでFOXO1,FOXO3 mRNA発現量を測定し,臨床的パラメータ(AMH 値やFSH基礎値,採卵数等)との相関を検討した.また原因不明群とコントロール群(男性不妊)の2群間の比較・検討も行った.

【結果】

FOXO3 mRNA発現量は採卵数と正の相関を認めたが,FOXO1は
採卵数と相関を認めず,hMG 投与量とのみ相関を認めた.年齢やFSH
基礎値,血清AMH 値とはどちらも相関がみられなかった.2群間の比
較では,原因不明群はコントロール群に比べて採卵数が有意に少なかっ
たが,受精率,良好胚率,着床率,妊娠率に有意差を認めなかった.ま
た原因不明群では,有意にFOXO3 mRNA発現量が低かった.

【考察】

ヒトでも,FOXO は卵胞形成に重要な役割を担っている可能性がある.
原因不明不妊では,FOXO3 mRNA発現量低値であることが卵胞発育
が不十分である原因となりえることが示唆された.

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