Papers and Abstracts

論文・講演抄録

妊娠率および流産率からみた移植 用培養液の比較検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:西垣 みなみ・秋吉 俊明・南 志穂・松尾 完・金子 亜絵理・古川 晋也・上田 泰子・福嶋 倫子・山口 敦巳・岡本 純英

岡本ウーマンズクリニック

Abstract

【目的】

移植用培養液の組成や価格は各製品によって様々である.高濃度のヒアルロン酸添加培養液は,胚の子宮内膜への着床を促進させるとの報告がある.一方で,ヒアルロン酸の濃度は妊娠率に影響しないという報告もある.そこで,保存胚移植の妊娠率および流産率について,2つの移植用培養液の比較検討を後方視的に行った.

【方法】

2015年1月から2016年4月までに単一保存胚盤胞移植を施行した535周期を対象とした.移植用培養液として,A社(A 群)およびB 社(B 群)の培養液を使用した.A社の培養液は高濃度ヒアルロン酸添加培養液と呼称され,B社の培養液と比較して高価であった.妊娠率および流産率についてA群とB 群を比較検討した(検討①).さらに,対象を35歳未満,35歳~ 39歳および40歳以上の3群に分け,それぞれの妊娠率,流産率についてA 群とB 群を比較検討した(検討②).次に,グレード別に分けて比較検討を試みた.すなわち,Gardner 分類のCを含まないBB 以上の群(以下:BB 以上)とCを含むBB 未満の群(以下:BB 未満)に分け,それぞれの妊娠率および流産率についてA 群とB 群を比較検討した(検討③).

【結果】

<検討①>A 群およびB 群における妊娠率はそれぞれ42.5%,42.9%であり,流産率はそれぞれ27.3%,31.3%であった.A,B 群間に有意な差は認められなかった.
<検討②>35歳未満の妊娠率はA 群50.7%,B 群55.8%であり,流産率はA 群19.4%,B 群27.6%であった.35歳~ 39歳の妊娠率は,A 群44.8%,B 群41.5%であり,流産率はA 群34.8%,B 群22.2%であった.40歳以上の妊娠率はA 群24.1%,B 群28.2%であり,流産率はA 群30.0%,B 群63.6%であった.35歳未満,35歳~ 39歳および40歳以上のいずれにおいてもA,B 群間に有意な差は認められなかった.
<検討③>A 群およびB 群におけるグレードBB 以上の妊娠率は,A群46.7%,B 群53.5%であり,流産率はA 群25.2%,B 群28.3%であった.グレードBB 未満の妊娠率は,A 群33.9%,B 群30.0%であり,流産率はA 群33.3%,B 群38.1%であった.グレードBB 上,BB 未満ともに有意な差は認められなかった.

【考察】

A,B 両群における①,②および③の検討結果より,A社およびB社の移植用培養液は,妊娠率および流産率に影響しないことが確認された.年齢の違いや,胚のグレードの違いによっても同様であった.B社の培養液はA社と比較して安価にもかかわらず,A社と同等の成績が得られた.したがって,コスト面において,B 社の培養液が優れていると考えられた.

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