Papers and Abstracts

論文・講演抄録

早発卵巣不全(POI)症例に対する 治療の臨床成績

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:髙橋 由妃・吉岡 伸人・西島 千絵・高江 正道・洞下 由記・河村 和弘・鈴木 直

聖マリアンナ医科大学

Abstract

【目的】

早発卵巣不全(POI:primary ovarian insufficiency)は,40歳未満の女性において高ゴナドトロピン性の無月経を認めることで診断される.POI 症例では自然排卵がほとんどおこらず,不妊治療に抵抗性を示し,確実な治療方法は提供卵子による体外受精のみとされている.当施設では2006年よりPOI 外来を開設し,POI 症例に対する不妊治療を行っている.そこで今回我々は,POI 症例に対する当院における体外受精の治療成績に関する検討を行った.

【方法】

2009年1月~ 2016年3月までの間,当院にて半年以上不妊治療を施行したPOI 症例における,採卵率,胚移植あたりの妊娠率を後方視的に検討した.次にPOI 症例を,若年群: 27-35歳,中間群: 36-40歳,高齢群: 41-46歳と年齢別に分類し,融解胚移植あたりの妊娠率を一般不妊治療の症例の成績と比較検討した.なお,本臨床試験は聖マリアンナ医科大学倫理委員会の認可のもと行われた.

【結果】

調査期間におけるPOI 症例は579例であり,その発症年齢は29.0±6.5歳,当院での治療開始年齢は34.9±4.0歳であった.それらに対してホルモン補充療法下にshort 法による調節卵巣刺激(合計3,064周期)施行した結果,35.8%(207/579人)の症例で卵胞発育を認め,採卵率(総採卵回数/ 治療周期総数)は16.8%(514/3064周期)であった.また,POI 群(212周期/156人)と一般不妊治療(266周期/148人)群における分割期胚による融解胚移植周期の妊娠率はそれぞれ約20%と有意差を認めず,年齢調整後の比較においても同等の成績であった.最後に,患者背景別の採卵可能群と不可能群の比較検討を行った結果,採卵不可能群ではPOI 発症年齢が早く(31.6±5.0 vs 27.6±6.7歳),発症から治療開始までの期間が有意に長い傾向(5.9±4.5 vs 9.1±5.4年)であることが示された.

【考察】

一般的にPOI では妊娠に至ることは困難であると考えられているが,POI 症例でも粘り強く複数回の調節卵巣刺激を行うことで,低い確率ながら胚を獲得することが可能であり,また獲得した胚は年齢相当の妊娠率を期待することができることが示唆された.より若年での発症,
治療開始の遅延が採卵率低下に寄与すると考えられるため,POIの病歴及び病因を考慮し,積極的な不妊治療を早期に検討するべきであると考える.

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