Papers and Abstracts

論文・講演抄録

胚移植後の胚残留による再胚植 の妊娠成績

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:﨑田 恵・清水 雅司・白井 美希・齋藤 可奈子・織田 文香・古川 美穂・安田 忠頼・杉浦 百香・丸岡 沙織・村田 朋子・村田 泰隆

ARTクリニックみらい

Abstract

【目的】
当院では,胚移植後にカテーテル内を洗浄して胚が残留していないかを確認しており,胚が残留していた場合は直ちに再移植を行っている.
ASRMによる胚移植に関するガイドラインレビュー1)では,胚残留による再移植について,妊娠率や流産率は低下しないと報告されている.
そこで当院の胚移植後の胚残留による再移植の妊娠成績について検討した.

【対象・方法】
2016年8月から2017年4月,ホルモン補充周期内膜に凍結融解胚を移植した860周期を対象とした.
胚移植方法は,ガラスシリンジを使用し,カテーテルにエアー2μL,次に培養液とともに胚を約8μL,最後にエアー2μLをローディングし,経腟超音波下で移植を行った.
検討①では移植胚数別の再移植の発生率を比較した.
検討②ではカテーテル内に胚が残留しなかった周期と胚残留による再移植を行った周期の臨床妊娠率と継続妊娠率を比較した.

【結果】
検討①:再移植の発生率は0.8%(7/860)であった.再移植を行った7周期のうち,移植胚数1個のケースが4周期,移植胚数2個以上のケースが3周期だった.
移植胚数における再移植の発生率を比較すると,1個:0.6%(4/687),2個以上:2.7%(3/115)であり,移植胚数が2個以上での再移植の発生率が高い傾向がみられた(p=0.065).
検討②:カテーテル内に胚が残留せず通常の移植を行った853周期と移植を行った7周期の臨床妊娠率および継続妊娠率は,それぞれ通常移植では44. 9%(383/ 853)と35. 4%(302/ 853),再移植では57. 1%(4/ 7)と57.1%(4/7)であり,有意差はなかった.

再移植での臨床妊娠および継続妊娠に至った4周期はすべて胚盤胞1個を移植して1個残留した4周期であった.
4周期とも,移植前の胚盤胞は孵化胚盤胞であったが,胚残留後はすべて胞胚腔が収縮していた.

【考察】
検討①より,複数胚移植では胚移植後の胚残留確認をより重点的に行う必要があると考えられた.
検討②より,胚移植後にカテーテルに残留した胚の再移植を直ちに行っても,臨床妊娠率および継続妊娠率は低下しないことを確認できた.
胚残留の理由として,シリンジを押しても胚がカテーテルから排出されないケース,胚が排出された後にカテーテルに逆流するケースなどがあると言われている2).
今後は,胚の排出がよりスムーズなカテーテル製品の検討に加え,シリンジを押す速度や排出後のカテーテルを抜く速度など移植手技についても検討していきたい.

参考文献

  • 1)Penzias, A et al., Fertil Steril. 107(4), 882-96, 2017.
  • 2)生殖補助医療- 胚培養の倫理と実際 P183-84
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