Papers and Abstracts

論文・講演抄録

非加湿型インキュベータによる長 期継続培養が胚培養環境に及ぼ す影響の検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:森田 博文・田崎 秀尚・内山 一男・薮内 晶子・小林 保・奥野 隆・加藤 恵一

加藤レディスクリニック

Abstract

【目的】
近年タイムラプスインキュベータ並びにSingle step medium(STM)の導入がもたらす胚培養への恩恵について様々な施設で検討が行われている.
一方で,非加湿型インキュベータ内で長期間継続培養することが培養液の浸透圧やOil の酸化などの胚培養環境の恒常性に及ぼす影響についての検討は少ない.
よって本実験では,非加湿環境下での長期間の継続培養が培養液の浸透圧変化およびOil の酸化に及ぼす影響について検討した.

【方法】
STM を用いて30μlのdrop を9個作成し3.5mlのOilで覆い,非加湿型インキュベータ内で培養(37. 0℃,6% CO2,5% O2)した.
Oil はA社,B社のLigh(t A社light区,B社light区)およびHeavy oi(l A社heavy区,B 社heavy区)を用いた.
培養3及び7日目に各区における培養液の浸透圧変化(培養後浸透圧-培養前浸透圧)を測定した.
また,A社およびB 社のHeavy oilにおける,開封直後,培養3, 5及び7日目の過酸化物価(POV)を測定した.
さらに,マウス2細胞期胚をこれらのOilで覆った培養液内で3日間培養(37℃ , 5%CO2, 95% Air)し,胚盤胞への発生能を比較した.

【結果】
培養3日目における浸透圧変化は,A社light 及びheavy 区で13.7及び8.0 mOsmol,B 社light 及びheavy 区で7.4及び5.7 mOsmol,培養7日目における浸透圧変化は,A社light 及びheavy 区で32.9及び21.2mOsmol,B 社light 及びheavy 区で17.1及び13.8 mOsmolであった.
培養日数が経過するに従い浸透圧の上昇が見られたが,Heavy oilはLight oilと比較してその上昇が抑えられた.
A社及びB 社のHeavy oilのPOVは,開封直後,培養3及び5日目では検出限界値(0.1meq/kg)以下であったが,A社のOilについては培養7日目に0.3±0.1meq/kgと上昇した.
また,POVの上昇がみられたOilでは,マウス2細胞期胚の胚盤胞発生率が有意に低下した.

【結論】
非加湿型インキュベータによる長期継続培養は胚培養環境に影響を及ぼす可能性が示唆され,それに伴う胚のクオリティの低下が懸念された.
長期継続培養による培養液の浸透圧上昇に関しては,使用するOilにより大きく変動することが明らかになり継続培養に用いるOilの選択は慎重に行わなければならない.
現在我々は,Dish 内を個別に加湿することにより,非加湿環境下で継続培養を行っても培養液の浸透圧上昇を抑え,胚培養環境の恒常性が改善できるか否かについて検討中である.また長期継続培養によるOilの酸化に対する対策について考慮が必要である.

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