Papers and Abstracts

論文・講演抄録

顕微授精後にカルシウムイオノ ファ処理を行った症例の出生児長 期予後

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:入江 真奈美1)・樽井 幸与1)・渡邊 千裕1)・小林 亮太1)・水野 里志1)・藤岡 聡子1)・井田 守1)・福田 愛作1)・森本 義晴2)

1)IVF大阪クリニック
2) HORACグランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
顕微授精における受精障害症例の発生頻度は1 ~ 3%といわれている.
このような症例に対して,顕微授精後に卵子に対してカルシウムイオノファなどの人為的活性化を付加することが有効な場合がある.
これまで,体外受精により誕生した児について様々な予後調査が行われている.
しかし,卵の人為的活性化処理を必要とする症例は少なく,児の予後を含めた安全性の検証は十分とは言えない.
このため,一例でも多くこの技術から誕生した児の予後情報を蓄積していくことは非常に重要である.
今回我々は,顕微授精後にカルシウムイオノファ処理を実施し妊娠出産に至った症例の児に対して,出生から5 歳児までの調査を行ったので報告する.

【対象及び方法】
2004年4月から2014年11月の間に,当院で受精障害が疑われたため顕微授精後にカルシウムイオノファ処理を実施し,妊娠出産に至った11例13児を対象とした.
まず,これらの児に対して,性別,在胎週数,奇形の有無,および出生時の身長と体重を調査した.
次に,継続調査に同意の得られた症例に対して,1歳半,2歳,3歳半,および5歳での身長,体重,および生育過程で出現した奇形を調査した.

【結果】
性別の割合は男児84.6%(11児),女児15.4%(2児)であった.平均在胎日数は男児268±10日,女児274±0日であった.先天異常では1児(7.7%)にダウン症を認めた.
出生時の平均身長は男児47.24±1.84 cm,女児48.0±3.54 cm,平均体重は男児2709±40g,女児3068±80 gであった.
1歳での平均体重は男児(2名)8.58±0.88kg,女児は1 名のみで8.2 kg,平均身長は,男児で73.45±2.05cm,女児で72.50cmであった.
1歳半での平均体重は男児(4名) 10. 22±0. 43㎏,女児(1名)9. 50㎏,平均身長は,男児で81.43±1.50㎝,女児で79.10cmであった.
2歳での平均体重は男児(3名)で11.87±0.13㎏,女児(1名)で11.00㎏,平均身長は男児で87.13±2.43㎝,女児で88.00cmであった.
その後の協力の得られた児(1名)の3歳半では身長92.50cm,体重12.40 kg,5歳では身長103.00cm,体重15.50 kgであった.後に発覚した奇形はなかった.

【考察】
身体発育について,一児に出生時の低体重を認めたが,それ以外全てで5歳までのパーセンタイル曲線内に収まっており,今のところカルシウムイオノファ処理の影響は認められないと考えられた.
また,男児の割合が通常IVF 比(一対一)に比べ有意に(P<0. 001)高かったこと,およびダウン症の児の発生率(7.7%)が高率であったことについては,活性化処理の影響なのか,症例数を増やし慎重に見極める必要がある.

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