Papers and Abstracts

論文・講演抄録

2種類のTime-lapse 観察シス テムにおける培養および妊娠成績 の検討

学術集会 一般演題(口頭発表)

2016年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:堤 由香理・大月 純子・辻 優大・岩㟢 利郎・片田 雄也・佐東 春香・波多野 佳苗・古橋 孝祐・苔口 昭次・塩谷 雅英

英ウィメンズクリニック

Abstract

【目的】

当院は,Vitrolife 社のEmbryoScope(ES)とPrimoVision(PV)の2種類のTime-lapse 観察システム(TL)を用いた培養を実施している.ESは専用dish( ES-dish)を用いた無加湿下の個別培養で気相の回復が早く,PVはwell of well( WOW-dish)を用いた加湿下のグループ培養である.今回我々は,異なる特徴を有する2種類のTL の培養成績について比較検討を行ったので報告する.

【方法】

2013年9月~ 2015年12月における,40歳未満かつ採卵初回,IVF /ICSI 施行卵数4個以上の症例を対象に,ES 群154症例1214個,PV群136症例1,316個を解析した.検討項目は,胚盤胞発生(BL)率,妊娠率,異常分割率,ならびに前核消失から2cell 〜5cell,8cellまでの時間(tpnb2 〜 tpnb5, tpnb8),2cell 〜 3cell( cc2),3cell 〜 4cell(s2),5cell 〜 8cell( s3)までの時間とした.培養dishの検討にはマウス前核期胚(CN57BL/6NCrSlc)を用いた.なお,各dishの対照群は60mm dishに150 を1スポット(WOW 対照群),ならびに25μlを12 スポット(ES 対照群)滴下した群とした.

【結果】

ES 群とPV 群の平均年齢に差はなかった.ES 群とPV 群におけるBL 率(57.6% vs 53.3%), 良好BL 率(G3BB ≦:26.4% vs 26.3%),異常分割率(10.1% vs 7.1%),ならびに化学妊娠率(66.7% vs 61.4%),臨床妊娠率(60.9% vs 50.9%)に差は認められなかった.同様に,各時間(h):tpnb2( 2.4±1.1 vs 3.1±5.3),tpnb3( 13.0±2.9 vs 13.1±7.2),tpnb4( 14.1±2.6 vs 14.7±7.1),tpnb5( 26.3±5.3 vs 26.3±8.9),tpnb8( 33.9±7.8 vs 34.5±9.6),cc2( 10.6±2.9 vs 9.9±3.7),s2( 1.1±2.0 vs 1.4±2.4),s3( 7.6±7.3 vs 8.0±7.1)に差は認められなかった.一方,dish の比較に用いたマウス胚のBL 率は,ES-dish;30.4%,ES 対照群;36.4%,WOW-dish;78.1%,WOW 対照群;31.3%であり,他群に比べてWOW-dishは有意に高かった(p<0.01).

【考察】

マウス胚の結果から,WOW-dishの有用性が改めて示された.しかしながら,ヒト胚ではグループ培養であるPV 群と,個別培養であるES 群で差が認められなかった.この理由については,今後の検討課題である.

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