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「着床の窓」を考察する

東口篤司

2018年度 年次大会-講演抄録 | Current Topics

学会講師 : 東口篤司

Abstract

「着床の窓」を考察する時、以下の1~3の項目に注意が必要である.

  1. ヒトの着床は月経(修正月経)何日目から何日目に認められるのかを調べる場合、現状では、例えば月経18日目から20日目の胚盤胞移植では妊娠が認められたが、それ以前、それ以後では妊娠が認められなかった、という方法で着床の期間を推定することが多い. しかし、ここで気を付けなければいけないのは、このような結果は月経18日目から20日目まで3日間の間に着床があったことを示しているわけではなく、その間の胚移植で着床したこと、つまりwindow of transfer(WOT)を示しているに過ぎないことである. 動物の胚盤胞は環境によってwindow of implantation(WOI)が開くまで子宮内で着床を待つことが出来ることが証明されている. WOIとWOTを区別することが必要である. WOIが月経何日目から何日目に認められるかに関しては諸説あり未だに確定されてはいない.
  2. 仮にヒトでは月経18日目から20日目までの3日間で着床がみられた、という結果が得られたとしても、ヒトのWOIの持続期間が3日間であることを意味するわけではない. ヒト全般では月経何日目から何日目に着床が認められるということと、そのヒトのWOIは何日持続するということを区別して考える必要がある. WOIという言葉は2つの意味で使われている. ヒトのWOIは何日続くのか、ヒトによって持続期間が異なるのかどうかについては全く解明されていない。
  3. WOIの時期は周期が変わっても同じ時期にあるのか、その時によって変わるのかについても未だに明らかになっていない. 内膜日付診では周期によって子宮内膜の発育速度は大いに異なるという報告がある. 一方で、周期によってWOIの時期は変わらないとする意見もあるが、このことを主張しているスペインのグループは7例のERA (Endometrial Receptivity Analysis)で証明しているに過ぎない. WOIの位置は変わるのだろうか?変わらないのだろうか?WOIの時期が時によってその位置を変えるのならWOIの指標を明らかにすることの臨床的価値はかなり低くなることになる.

WOIの指標として、integrinなどの生化学的指標、内膜日付診、pinopodes、NCS (Nuclear Channel System) の形態学的指標、ERAの遺伝子学的指標が提唱されている.しかし、どれもが確立されたものではなく、以下1~5のように発展途上の検査であることを理解しておく必要がある.

  1. Integrinなどの生化学的指標は分泌期において正規分布的な変化を示すため鋭角的な判断が難しい.
  2. 内膜日付診は病理医による違い、同じ病理医でもみる時期による違いが多く、正常妊孕性群と不妊群と差がないとされ、世界的に日付診自体の信頼性が低くなっている. また判断項目が多く、どの項目でWOIを検討すべきかの判断が難しい.
  3. Pinopodesはその定義が不定で、信頼できるWOIの指標としては世界的に認められない傾向にある.
  4. NCSは月経19~24日目に出現すると報告されているが 月経18~27日目に出現するとの報告もある. 電顕的な観察を含めると半世紀の間研究されているが未だ臨床応用はされていない.
  5. ERAはすでに世界で3万例に施行されているとのことだが、そもそも何故LH+7遺伝子パターンではなく妊娠できる遺伝子パターンがどこにあるのかを探すのではないのか、何故LH+6, LH+8の遺伝子パターンに言及しないのか、などの疑問も多い.
  6. 本講演では、上記事項に関して何が分かっていて何が分かっていないか、何を目指さなければならないか、を考察したい。
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