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[ 学術奨励賞 ]
ヒト初期胚のミトコンドリア機能と加齢との関係

年次大会 一般演題

2018年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 森本 真晴1),橋本 周2),森本 篤3),山中 昌哉1),中岡 義晴1),柴原 浩章4)
森本 義晴5)

Abstract

背景:女性の加齢に伴う妊孕能の低下は広く知られており、その主な原因として胚質の低下が挙げられる。近年、本邦における不妊患者の年齢は年々上昇傾向にある。本研究では提供を受けた受精卵における加齢マーカーの抽出と改善方法の提案を目指す。

目的:加齢に伴う変化の一つとして、細胞にエネルギーを供給するミトコンドリア機能に着目した。ミトコンドリア機能の低下は細胞機能の低下、すなわち「胚の老化」につながると考えられる。
提供胚を用いた研究では凍結受精卵を融解し、ミトコンドリア機能を十分に回復させた後、酸素消費量、ミトコンドリアDNAコピー数を計測し、桑実期胚と胚盤胞期胚におけるミトコンドリア機能とドナー年齢との関連性を調べた。次に、培養液にカルニチンを添加し、ミトコンドリア機能が回復するかどうか、また胚盤胞への発育を改善するかどうか検討した。また、桑実期胚から胚盤胞への発育能とドナー年齢との関連性を臨床データから解析した。

方法:単一の施設において不妊治療を既に終了している患者に対し、十分なインフォームドコンセントによる同意を得た後、廃棄が決定した凍結受精卵の提供を受けた。受精後3日目の凍結受精卵を融解した後、桑実期と胚盤胞期における酸素消費量を測定した。次に、受精卵を破壊した上でreal-time PCRによりミトコンドリアDNAコピー数を測定した。これらのデータとドナー年齢との相関についてスピアマンの相関解析により回帰分析を行った。また、同一患者から得られた凍結受精卵において培養液内へのカルニチン添加群と未添加群に分け、融解後の酸素消費量を測定し、t検定により両群の酸素消費量への影響について調べた。胚の形態変化を連続撮影した臨床データを使用して、桑実期胚から胚盤胞への発育能とドナー年齢との関連性を解析した。さらに、不妊治療中の同一患者から得られた受精卵において培養液内へのカルニチン添加群と未添加群に分け、両群の培養成績についてx²検定により比した。

結果:融解後の桑実期胚における酸素消費量は患者年齢の上昇と共に減少した(R²=0.492, P<0.05)。これは桑実期胚でのミトコンドリア機能が加齢に伴い低下することを示した。一方でミトコンドリアDNAコピー数に変化は認めなかった。胚盤胞期胚では年齢による影響は認められなかった。培養液内へのカルニチン添加により、桑実胚期での酸素消費量は増加した(P<0.05)。また、カルニチン添加により良好胚盤胞率は上昇した(P<0.05)。ドナー年齢の上昇に伴い、桑実胚期胚の胚盤胞への発育能は低下した(P<0.05)。
本研究の結果よりドナー年齢の上昇に伴い、桑実胚期の酸素消費量が低下すること、カルニチン添加により桑実胚期の酸素消費量が改善すること、カルニチン添加により形態良好胚盤胞率が上昇することが示された。

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