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[ 柳町隆造賞 ]
マウス卵巣組織培養による卵胞発育解析とヒト卵巣への応用と展望

年次大会 一般演題

2018年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 邨瀬 智彦1),岩瀬 明2),林 祥太郎1),村岡 彩子1),仲西 菜月1),笠原 幸代1),永井 孝1),中村 智子1),大須賀 智子1),後藤 真紀1),吉川 史隆1)

Abstract

目的:Oncofertilityの分野で卵巣組織凍結が実用化されてきている。これは多くの原始卵胞を保存できる反面、自家移植の際に微小残存病変の再移入リスクがある。そこで摘出卵巣組織から成熟卵子を得る技術が確立できたらIVF-ETを施し、がん細胞の再移入を回避できる。我々はマウス卵巣組織培養法を開発し、種々の増殖因子を添加して卵胞発育の経時的評価を行っている。一方、我々が樹立したヒト不死化顆粒膜細胞株(HGrC1)でin vitro実験を行い、卵巣組織培養で得られた結果の機序を検証している。GDF-9は卵子に特異的な成長因子で、卵胞の産生、発育に寄与する。今回、この実験系で得られた卵胞発育解析結果およびGDF-9とAMHレセプターとの関係についての知見も呈示する。

方法:4週齢マウスの卵巣を4片に切り分け、GDF-9、AMH、GDF-9 + AMH添加群およびコントロール群に分けて14日間培養しつつ、1日1回静止画を撮影し卵胞面積等を計測した。また、培養器一体型顕微鏡を用いて30分毎のタイムラプス撮影を行った。培養後の組織からRNAを回収しAMH2型受容体発現を評価した。組織から放出された卵母細胞の減数分裂期も評価した。一方、HGrC1にも同様に添加し細胞内シグナル発現解析を行った。実験結果を踏まえAMH受容体ブロッカーを卵巣組織に添加し同様に卵胞発育を評価した。さらに施設内倫理委員会の承認下で、ヒト卵巣組織培養を行い卵胞発育、viability等を評価した。

結果:GDF-9添加群では卵胞発育の促進を認め、GDF-9にAMHを添加した群ではGDF-9添加群よりも卵胞発育が抑制された。AMH単独添加群では卵胞発育は低調であったが、viabilityは保たれていた。マウス卵巣組織、HGrC1共にGDF-9添加群ではAMH2型受容体の発現低下を認めた。AMH添加下にHGrC1を培養するとSmad 1/5/8のリン酸化が亢進したが、同時にGDF-9を添加すると濃度依存的にSmad 1/5/8のリン酸化が抑制された。さらに、AMH受容体ブロッカー添加で卵胞発育促進を認めた。ヒト卵巣では培養下の経時的な卵胞発育評価が困難であり、約30日間の培養で細胞死が顕在化した。

考察:マウス卵巣組織培養法は、卵胞発育、卵母細胞放出等の挙動を経時的に評価できる。HGrC1を用いた細胞内シグナル解析を併用することで各増殖因子の効果の裏付けが可能となった。今回はGDF-9による卵胞発育促進の背景にAMH受容体の発現低下が存在し、AMH受容体ブロッカー添加で卵胞発育が促進することを示した。ヒト卵巣組織培養では卵胞密度が少なく、卵胞発育に要する時間が長い。今後はviabilityの保たれた長期培養法および原始卵胞から前胞状卵胞への発育を促進する培養法の開発に注力する。

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