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卵胞液中のケトン体濃度が胚培養および発生速度に与える影響の検討

年次大会 一般演題

2018年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 北上 茂樹,永石 綾,黒岩 しおり,植村 智子,和泉 杏里紗,松山 茜,
土井 香奈子,萩原 美聖,古賀 剛,古賀 文敏

Abstract

目的:卵胞液には胚培養に影響する様々な成分が含まれている。近年、脂肪酸を分解してできるケトン体がエネルギー源として着目されている。胎児や新生児に高濃度のケトン体が検出されており、エネルギー源として利用されているのではないかと考えられている。胚発生においては、これまでの研究でマウス胚では脂肪酸、ウシ胚ではケトン体をエネルギー源として利用可能なことが報告されている。我々の研究でヒト卵胞液および卵管液にケトン体は含まれていることが明らかになっている。今回ヒト胚においても胚発生にケトン体がエネルギー源として利用されている可能性を考え、胚培養に与える影響およびタイムラプスシステムEmbryoScope+™(以下、ES+)による胚発生の動的解析を行ない、卵胞液中のケトン体濃度が採卵後の胚培養と発生速度に与える影響を検討した。

方法:当院にて2016年11月から2018年3月にARTを実施し、採卵時の卵胞液のケトン体濃度(β-ヒドロキシ酪酸、アセトアセテート)を測定した334周期を対象とした。
検討1:採卵時の卵胞液のケトン体濃度を100μmol/l以上の高ケトン体群(52周期)、99-50μmol/lの中ケトン体群(46周期)と50μmol/l未満の低ケトン体群(34周期)に分け3群間の胚培養の成績を比較した。
検討2:採卵時の卵胞液のケトン体濃度で胚を120μmol/l以上のA群(204個)と120μmol/l未満のB群(100個)に分け胚発生速度をES+により比較した。また、前核消失から胚盤胞期までをDr. Markus Montagにより提唱されたKIDScore™D5 v2モデルを用いて解析し、比較した。

結果:検討1:高ケトン体群、中ケトン体群、低ケトン体群で卵子成熟率は81.4%、82.1%、84.2%と有意差は見られなかった。Day3良好胚率は62.0%、56.6%、53.5%と有意差は見られなかったが高ケトン体群で高い傾向だった。良好胚盤胞率は28.3%、16.5%、8.4%と高ケトン体群で高く低ケトン体群間で有意に高かった(p<0.01)。そして、累積妊娠率は51.9%、32.6%、26.5%と有意ではないが高ケトン体群で高い傾向だった。
検討2:A群とB群間で発生速度を比較した結果、前核消失後から胚盤胞期までは、88.9時間、91.5時間とA群で早い傾向にあった。さらに、拡張胚盤胞期までは91.3時間、99.2時間とA群で有意に早い結果となった(p<0.05)。KIDScore™D5 v2は5.1、4.3とA群が高い傾向にあった。

結論:卵胞液中のケトン体濃度の違いにより良好胚率、妊娠率や発生速度が影響を受けることから胚発生にはこれまで知られているエネルギー源以外にケトン体が利用されている可能が示唆された。

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