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精子凍結前における分離洗浄処理の有無で融解後の精子状態に与える効果の検討

年次大会 一般演題

2018年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 宮本 拓真1),佐藤 学1),中岡 義晴1),森本 義晴2)

Abstract

目的:生殖補助医療において精子凍結保存は必要不可欠な技術であるが、凍結融解後の精子死滅による全体数の減少や浸透圧の変化によって精子の膜が膨張してしまう等、精子への負荷もかかってしまう.精子数の減少のため当院での凍結精子の使用は顕微授精のみに限定している.これは、患者へのコスト的負担を大きくするだけでなく、原精液の精液所見が悪い患者の場合、使用可能精子がなくなる可能性がある.通常精子凍結は洗浄後に行われることが多いが、精漿に含まれるたんぱく質が凍結時の精子保護になる報告があり、融解後精子の改善に繋がる可能性が考えられる.そこで今回凍結前に洗浄処理の有無で融解後の精子状態が変化するか検討を行った.

方法:精液検査後の余剰精液で精液量が2ml以上の同意の得られた30症例を対象とした.
同一症例の精液を1mlずつ分け、精液を凍結保護剤(Sperm maintenance medium, Irvine)と3:1で混合、凍結し、精液群とした.もう一方は、精液1mlをIsolate(Irvine)で密度勾配遠心(300G,20分、以下DGC)を行い、遠心洗浄後に同様に凍結して洗浄群として以下の検討を行った.検討①融解後に両群とも遠心洗浄法で処理して比較.検討②融解後に精液群はDGC後に洗浄処理、洗浄群は融解後に遠心洗浄後に比較.検討③融解後に精液群はDGC+Swim-up法を行い、洗浄群は遠心洗浄+Swim-up後に比較.それぞれ10症例ずつ精子回収率、運動精子回収率、凍結融解前後での奇形増加率の検討を行なった.

結果:全ての検討に用いた原精液の所見に差はなくWHO基準を満たしていた.検討①奇形増加率が洗浄群(1561.3%)に比べ、精液群(87.5%)は有意に低かった.精液群において融解処理後に精子の凝集塊が生じていた.検討②では洗浄群の精子回収率94.4%、運動精子回収率37.5%に比べ、精液群は精子回収率12.2%、運動精子回収率7.9%と有意に低かった.検討③では両群間に差は認められなかった.

考察:検討①で精液群において奇形増加率が下がったものの精子の凝集が目立ち、とくに検討②および③ではDGCの遠心分離による精子分離に障害が生じた.本検討では精液で凍結することで精子膨化発生は抑えられたものの精子数の確保が課題となった.遠心分離前に稀釈混合するなど前処理することで精子凝集発生を抑えることができるかもしれない.精子凍結前に遠心分離を省くことは遠心分離に要するトータル時間を短縮でき、精子への物理的負荷を軽減するメリットもあると考えられる.

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