論文詳細ページ

CineMRIが明かす生殖における子宮の役割

徳永義光

2018年度 年次大会-講演抄録 | Current Topics

学会講師 : 徳永義光

Abstract

体外受精によって生殖医学の世界は大きな扉が開かれた。受精現象、胚発生過程などが詳細に解明されてきた。これらの知見は不妊治療という臨床の現場にも福音をもたらした。卵管因子・男性因子のカップルに自らの子孫を残す可能性を広げてくれたのである。

しかしながら機能性不妊・原因不明不妊・習慣流産・繰り返す異所性妊娠のケースには体外受精がその原因へのアプローチにはつながらないケースも少なくない。

100μm程度に過ぎない胚が、着床する場所は「子宮という臓器」である。胚の大きさは種の差はさほどないが、子宮の大きさは種間で非常に異なる。したがって小さな子宮を持つ実験動物から得られた着床の機序の知見が、大きな子宮を持つ動物にそのまま当てはまるわけではない。子宮は着床の場としての機能のほかに、膣内に射出された精子を受精の場である卵管まで運ぶトランスポーターとしての役割も果たす。その過程で膣内の細菌叢を子宮内に取り込み子宮内細菌叢を形成し、着床時の免疫調整を行うという重要な役割も果たしていることが分かってきた。

これまで子宮は卵巣からのホルモンにより子宮内膜を変化させ、単に胚着床の場としての受動的な役割しか持たない臓器と考えられてきた。本当にそうであろうか?子宮という臓器のダイナミズムを見てゆくと、子宮は妊娠の過程で能動的かつ中心的な役割を担っていると思われる。

われわれはcine-MRIによる子宮の収縮運動を観察することで、妊娠過程の中心的役割を果たす「臓器としての子宮」の機能を評価することが出来るようになってきた。

子宮の収縮運動はおもにコリン作動性神経による。着床期の異常な子宮収縮を抗コリン剤の投与によって調整することで、難治性の不妊症例を妊娠させることが出来た。

cine-MRIを日常の不妊症検査に導入することで、子宮筋腫・子宮腺筋症・卵管水腫の着床への影響や、習慣流産および異所性妊娠の原因の診断が出来るようになり、不妊原因に即した治療が行えるようになった。

cine-MRIにより知見は、生殖医学の新たな扉を開くかもしれない。

ページ先頭