Papers and Abstracts

論文・講演抄録

Day4で胚盤胞に至った胚における新鮮胚移植の有用性

学術集会 一般演題(口頭発表)

2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:大竹 由希子・井上 須美子・樋本 美穂・石垣 菜月・鮫島 沙織・市村 智子・今野 莉子・村田 安里紗・陣内 彦良

陣内ウィメンズクリニック

Abstract

目的:一般的に胚盤胞はD5~6で形成されるが、稀に発生速度が速いD4で胚盤胞に至る場合がある。一方、近年ではOHSSの予防や排卵誘発の影響による子宮内膜の着床時期のずれなどにより、凍結融解胚移植の方が新鮮胚移植よりも妊娠率が高いため、全胚凍結が主流になりつつある。そのためD4胚盤胞の新鮮胚移植を検討している施設は少なく、その有用性については未知である。当院ではより自然な妊娠を望む患者が多く、主に低刺激での採卵を行っているため得られる胚も少ない。その胚を有効活用するためにも、新鮮胚移植か融解胚移植かを慎重に検討する必要がある。そこで、D4で胚盤胞に至った胚が新鮮胚移植において有効かどうかを検証するために、D5で胚盤胞に至った胚と比較して、新鮮胚移植と融解胚移植の臨床成績を後方視的に検討した。

方法:2014年1月~2018年5月に当院でcIVFまたはICSIを行い、D4またはD5で胚盤胞に至った40歳未満症例の胚564個を用いた単一胚移植周期を対象とした。なお、融解胚移植は自然排卵後5日目の移植日に融解し、約3時間の回復培養を行った胚のみとした。D4で新鮮胚移植を行った群(D4新鮮群:39周期)、D5で新鮮胚移植を行った群(D5新鮮群:200周期)、D4で凍結し融解胚移植を行った群(D4融解群:5周期)、およびD5で凍結し融解胚移植を行った群(D5融解群:320周期)の4群に分け、臨床妊娠率、流産率について検討した。

結果:臨床妊娠率、流産率はそれぞれD4新鮮群:43.6%(17/39)、23.5%(4/17)、D5新鮮群:22.5%(45/200)、20.0%(9/45)、D4融解群:40.0%(2/5)、0%(0/2)、D5融解群:44.7%(143/320)、17.5%(25/143)であった。D4新鮮群とD5新鮮群では、臨床妊娠率においてD4新鮮群が有意に高い値となった(P<0.01)。また、D5新鮮群とD5融解群間においてD5融解群の臨床妊娠率が有意に高い値となった(P<0.01)。D4新鮮群とD5融解群では有意差はなかった。

考察:39歳以下の新鮮胚移植ではD4の臨床妊娠率がD5よりも高く、D4で胚盤胞に至った胚では、新鮮胚移植でも融解胚移植でも同等の妊娠率が得られる傾向にあったが、D4融解胚の症例が少ないため今後数を増やして検討する必要がある。しかし、より自然な妊娠を希望する患者において選択肢が広がったことにより、D4新鮮胚移植の有用性が示唆された。一方、D5で胚盤胞に至った胚は、新鮮胚移植よりも融解胚移植の臨床妊娠率が高いことから、新鮮胚移植を行わず凍結した方が良いと考えられた。40歳以上については胚盤胞凍結率が下がるため別途検討が必要であると考えられる。

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