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がん・生殖医療の今後の展望

鈴木 直

2019年度 年次大会-講演抄録 | がんと生殖医療

学会講師 : 鈴木 直

Abstract

がん・生殖医療とは, 小児, 思春期・若年(AYA)がん患者に対する妊孕能温存(生殖機能温存)を目指した医療がその定義となる.アルキル化剤などを含む化学療法レジメンや放射線照射による性腺毒性により, 残存する原始卵胞や精子の数が減少し,最終的にがん患者の妊孕能(生殖機能)が喪失する場合がある.医療の進歩と共にがん患者の生存率が改善された現状において,がんサバイバーシップ向上のためがん治療開始前に妊孕能温存(生殖機能温存)に関する情報を,がん患者とその家族に提供することが重要である.しかしながら一般不妊治療と異なり,がん・生殖医療はその対象が「がん患者」となることから, 何よりもがん治療を優先とする中で患者や家族の自己決定をいかに促すことができるか(子どもをもたない選択に関しても), 慎重な対応が必要となる.本邦においては,2017年7月に日本癌治療学会によって,「小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年度版」が刊行された.本邦初の本領域に関するガイドラインは 1 つの総論と 8 つの領域に渡って CQに対する推奨を示した世界初の本領域に関する内容となっている.
がん・生殖医療の今後の課題として, 以下の6つを掲げる;①がん・生殖医療におけるインフォームドアセント(小児, 思春期)ならびにインフォームドコンセントの指針など治療選択のための体制整備,②妊孕性温存を希望しなかった患者や妊孕性温存療法の適応外となった患者に対する配慮,2012年頃以前にがん治療を受療したがんサバイバーの QOL 維持と向上を目指した医療介入,③がん・生殖医療のさらなる啓発と情報発信の促進(がんサバイバーによるピアサポートを含む), ④妊孕性温存療法に対する公的助成金補助制度の検討,⑤がん・生殖医療に関わる専門医療従事者の育成,⑥がん・生殖医療の技術革新.さらに,が ん患者に対する生殖医療に関する情報を提供する「が ん・生殖医療連携ネットワーク」が全国各地に存在し ていないこと(地域格差),がん治療医と生殖医療を専 門とする医師との密な連携が十分でない,また十分で きない施設もあること(施設間格差),さらに生殖医療 が保険診療ではないことから生殖医療を選択する際の がん患者の経済的負担など解決すべき課題も明確化さ れている.本講演では,がん・生殖医療の今後の展望 に関して概説させて頂く.

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