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つじクリニックのTESE: 精子回収予測と精子処理の実際

成吉昌一

2019年度 年次大会-講演抄録 | 日本臨床エンブリオロジスト学会「よくわかる!精巣内精子(細胞)の採取と選別〜工夫,コツ,こだわり〜」

学会講師 : 成吉昌一

Abstract

無精子症は, 一般男性の1%, 不妊男性の15%にみられるとされ,閉塞性無精子症(OA)と非閉塞性無精子症(NOA)に大別される.両者は精子の回収率に大きな差があるため,その鑑別は極めて重要である.OAは精路の閉塞や欠損により精液中に精子を認めない状態で, 造精機能には問題がないと考えられるが, その診断は精巣容積が正常で FSH 値の上昇がなければ OA というような単純なものではない.OA の診断には超音波検査(US)が不可欠であり, われわれは初診時に陰嚢 US で精巣網−精巣上体−陰嚢部精管の中枢側精路を, 経直腸的USで精管膨大部−精嚢−射精管の尿道側精路を詳細に観察し, 両側精路に通過障害の所見を認めればOAと診断している.当然ながら精路通過障害に造精機能障害を合併している症例はありうるが,US で両側の精路閉塞が明らかで, FSH の上昇もなければ, 精子回収率はこれまでのところ100%である.
術前診断でOAとされれば,生検で精細管を採取する.採取された精細管は 10% 血清加 HTF 溶液 0.3mlを入れたディッシュに浮遊し, 手術場に隣接した検査室のクリーンベンチへ運ばれる.精細管を滅菌フロストスライドガラスですり合わせて mince 液を作成し,倒立顕微鏡(400倍)で観察し,精子の運動性やおおよその数, 形態を直ちに執刀医に報告し, その情報はスタッフや患者に共有される.精巣内精子の存在が確認されれば, 次に精巣上体の穿刺・吸引を試みる.採取された精子を含む mince 液に 10% 血清加HTF溶液を追加して0.5mlに調整し,同量のExtra TMSperm Freeze と合わせてヌンクチューブに分注し, 室温で15分間静置してから凍結する.OA精子については, エオジン Y 染色により凍結前および凍結融解後の精子生存率を確認している.
NOA は造精機能障害による無精子症である.USで両側の精路に通過障害の所見がなければ, 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を除き,microdissectionTESE(micro-TESE)による精巣内精子回収を計画するが,US で NOA と診断されても造精機能が正常な症例がまれに存在する(例えば精巣内精路閉塞).Micro-TESE による NOA の精巣内精子回収率は一般に30-40%で,これまで精巣容積やFSH,インヒビンBなどの値から,精子回収の予測が試みられてきたが, 単独でもそれらを組み合わせたスコアでも信頼に足る予測因子はなかった.われわれはUS画像の明るさとコントラストを調整する独自の方法で精細管径を評価してた.精細管径を0μm/100μm/200μm/250μm/300μmに分類すると, 全体の精子回収率が30%であるのに対し, 径250μm以上の精細管が描出される症例の精子回収率は63%であり,術前の精子回収予測因子として非常に有用と考えられる.

NOA では, 精子回収率にこだわらず, 顕微授精に向けて質の高い精子を提供することを第一に迅速な精子処理を心がけており, 精子へのダメージを最小限に留めるため, 遠心分離や酵素処理などは行っていない.精細管を眼科用セーレで細切し,OAと同様
に滅菌フロストスライドガラスですり合わせてmince液を作成,顕微鏡下に観察し,精子や細胞の有無,精子があれば, その数, 運動性や形態を直ちに執刀医に報告し,OA同様に凍結する.精子がなければディッシュ内の mince 液を見直し, それでも見つからない場合はmince液を集めて再度時間をかけて検鏡する.
本講演では,US による無精子症の精子回収予測とTESE時の精子処理の実際について報告したい.

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