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患者適応および精細管の状態からTESEの精細管処理を考える

水田真平

2019年度 年次大会-講演抄録 | 日本臨床エンブリオロジスト学会「よくわかる!精巣内精子(細胞)の採取と選別〜工夫,コツ,こだわり〜」

学会講師 : 水田真平

Abstract

男性の 100 人に 1 人は無精子症と言われており, その原因は大きく分けて2つある.精路が閉塞しているか精管が無い閉塞性無精子症(OA),およびクラインフェルター症候群,Y 染色体微小欠失(AZF 欠失), 抗ガン化学療法後や停留精巣固定術後, 原因不明で造精機能が著しく低下している場合などの非閉塞性無精子症(NOA)である.無精子症患者が挙児を得るには, 精巣内精子採取術(TESE)が有用となる.日本では 2016 年に,TESE-ICSI が 2,799 周期実施されており,TESE 件数は不明で, 患者適応や ICSI 後の成績, 出生児数も集積されていない.本発表では, TESE および TESE-ICSI の治療成績を患者の原因別に示し, 症例別の精細管の状態や精子調整や探索方法, 成績改善に向けた対処方法を, 精子および卵子へのアプローチも含めお話したい.当院は2013年9月に開院し,2019年4月までの間に 1,532 件の TESE を実施し, 患者適応別に精子回収率およびその後の治療成績は大きく異なっていた.例えば,OAの精子回収率は100%で, 培養成績は良好, 症例あたりの臨床妊娠率は 85%を越える.

一方,NOAのうち,クラインフェルター症候群および AZFc 欠失の症例では回収率 53%と82%と高率だが,培養成績は不良で, 症例あたりの臨床妊娠率は 61% および 64% と低率であった.成績が異なる理由は, 得られる精子の数とその質によるものであると考えられる.精子を数多く回収できた場合, 質の良い運動精子を選別することが可能だが, 精子数が非常に少ない場合では,非運動精子を使用せざるを得ないこともある.そのため, 選別し得る数の精子を効率よく探索することが重要である.OAの場合, 精巣のどの部位から精細管を採取しても均一であり, 精細管の一部をランダムに採取する conventional TESE によって多数の精子を回収できる.NOA の場合は, 精細管が均一の場合と不均一の場合があるため, 顕微鏡下で白く太く屈曲している精細管を狙って採取するmicro TESEが有用で, 不均一症例の方が精子回収率は高く, 胚培養士による精子探索も容易である.不均一な症例では, 太い精細管のみを採取することで, 精子の割合が多い懸濁液となり,精子の探索も容易になり,良好精子の選別も比較的可能となる.それに対して精細管が均一な症例は maturation arrest 傾向で, 精子を認めないか, 精細胞に対して精子の割合が極めて少ないことが多く, 精子の探索は極めて困難で時間を要する.
我々はこれまでの経験から,TESEの方法や精子の調整方法は, 上記の様な精細管の状態に応じて適切に対応する必要があると考えている.精子数が多い場合は精子に負荷をかけないシンプルな遠心処理,精子数が少ない場合は精子のロスを減らした処理,精細胞が多く精子の相対量が少ない場合は, フィルトレーションなどにより精子を抽出する,などである.また, 質が良くない精子であっても, いかに精子を選別し, 成績を向上させるかも考えなければいけない.非運動精子を使用した場合の成績は非常に不良であるが, 妊娠に至る症例も存在する.精子の選別はペントキシフィリンを使用した精子の賦活化, HOST や形態による選別法が主流であり, カルシウムイオノフォアなどを使用した卵子活性化も併用される.当院でのこれらの使用方法や, 治療成績の比較もお示ししたい.

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