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ARTと培養液:培養は安全ではない

村上正夫

2019年度 年次大会-講演抄録 | Symposium1「ART を行うための理想的な培養液とは」

学会講師 : 村上正夫

Abstract

当院では, ヒト IVF のモデルに主にウシ胚を用い,より安全で効果的な培養液の検討を行っている.私

がウシ IVF の実験を始めた 1995 年当時,IVF は, 広く人々の貴重なタンパク源になるウシを効率よく増

やす, あるいは遺伝子導入(や後の体細胞クローン)技術と組み合わせ, ミルクから医薬品(血液凝固因子

等)を大量生産するなど, 新しく実用的な仕事に感じた.しかし, 当時の技術では,IVF 胚は体内由来胚

と形態や発育動態が大きく異なる(発育異常が起こる)のが文献や現場体験ですぐに分かった.これには

桑実胚 〜 胞胚腔形成の異常(premature blastulation), 胚質(耐凍能)低下, 過大仔などがあり, 大きな原因の一つに, 胚盤胞形成を促すため培養液に加える全血清が挙げられた.その後の研究蓄積で, 低酸素培養やアミノ酸添加も普及し, 現在ヒト IVF では, 品質管理された血清不在の市販液で良好胚が培養でき

る.しかし, 血清アルブミンや代替血清などの血清由来成分は依然添加されており, 上述に関連する危

険性は否めない.また, いくら培養環境が改善されても, 健康な体内環境には遠く及ばず, 胚にとって

不自然な環境なのに変わりはない.ここでは, 過去の経緯を基に, 今我々が取り組んでいる培養液の検

討の意義と概略も一部紹介したい.

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