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当院における Piezo-ICSI の運用

佐藤 学

2020年度 年次大会-講演抄録 | 日本臨床エンブリオロジスト学会「Piezo-ICSI の今後の展開と有用性」

学会講師 : 佐藤 学

Abstract

顕微授精(ICSI)は生殖補助医療において今や必須の技術であり,ICSI の技術や成績は医療施設のレベルを示すインジケーターの一つとも言える.ICSIの手 法はConventional-ICSIとPiezo-ICSI に大きく分けられる.以前からPiezo-ICSIは生殖補助医療の現場で活用されてきていたが2010年代から国内で広く普及した印象が強い.当院でも2011 年にPiezo-ICSIを導入して9 年ほど経過している.国内のその当時の状況は団塊ジュニア世代が治療を受ける中心となり,体外受精件数は増加の一途をたどるとともに治療を受け る患者の平均年齢も上昇し,高齢卵子の品質低下へ の対処が必要であった.そこでダメージの少ないPiezo パルスを用いて「優しいICSI」を行うことで成績の低下を防ぐ一手とならないか,というモチベーションでPiezoICSIを導入した.また,全面的にPiezo-ICSIに変更するのではなくオプションとしてスタートし,現在では Conventional-ICSIとPiezo-ICSI の実施比率はほ ぼ1:1である.Piezo-ICSIとConventional-ICSIでの受精率にほぼ差はなく,どちらかが適正と判断される 症例の場合は医師と相談のもとでICSI の方法を選択する場合があるが,指定がない場合はランダムに選択 して実施している.

当院の Piezo-ICSI の受精成績はConventionalICSIと同等であった.培養成績も同様である.PiezoICSIの利点は確実な精子不動化と透明帯と細胞膜の穿破ができること,そのステップが機械化され設定が数値化されていることであると考えている.ConventionalICSIが Piezo-ICSIに比べ劣っているとは考えておらず, 成績に違いがあれば何かしら課題が残っていると判断することも一つの考え方ではないだろうか.ただし,その課題を克服するためにPiezo-ICSIが糸口になるのであれ ば,Piezo-ICSIへの変更が解決法の一つであることは言うまでもない.当然のことではあるが Piezo-ICSIのシステムと特性を十分に理解して運用することが必要で, 不十分であると成績の低下を引き起こすことになりかね ない.特にパルスの設定,パルスの「効き」,セッティン グは重要であって単純にPiezo-ICSIはとりあえず「やれ ばできる,簡単」というものではないことは念頭において おくべきであると考える.発表ではこれまでの運用の経 緯と結果,注意点について述べたい.

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