Papers and Abstracts

論文・講演抄録

プラセンタエキス含有サプリメント 摂取は胚培養成績を改善するか?

学術集会 一般演題(口頭発表)

2019年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:山田 健市・菊地 裕幸・岸田 拓磨・菅野 弘基・岸田 理英・佐藤 那美・結城 笑香・吉津 葵・佐々木 郁弥・片桐 未希子・吉田 仁秋

仙台ARTクリニック

Abstract

【目的】
ARTにおいて,体質,卵質改善の為,サプリメントや鍼灸等の統合 医療を利用している患者は多くなってきている.特に高齢患者は, サ プリメント利用が顕著である.プラセンタエキス含有サプリメントのプラ リエ(メニコン社)は,L-カルニチン, α-リポ酸, コエンザイムQ10, レスベラトロール, 葉酸も配合しており, 抗酸化成分による体質改善が 期待できる.しかしながら, サプリメントは食品の一つであり, その有 効性には懐疑的な面もある.そこで本研究では, プラリエ摂取の有効 性を評価する為, 摂取前後における胚培養成績を比較検討することを 目的とした.また,40歳以上患者では, サプリメント摂取率が比較的 高いことから,40歳以上患者について同様に検討を行った.

【方法】
2016年5月から2019年2月, 当院にてART(ICSI)を実施したプラリ エ摂取前104周期(平均年齢37.6歳),摂取後481周期(平均年齢39.0歳) について, 正常受 精 率,Day3良 好 胚 率,Day5/6胚 盤 胞 発 生率,Day5/6良好胚盤胞発生率の比較検討を行った.次に,40歳以上患者 のプラリエ摂取前30周期(平均年齢41.7歳), 摂取後258周期(平均年 齢41.9歳)について, 同様に検討を行った.Day3良好胚は,6cell 以 上かつフラグメンテーション 30% 以下,Day5/6良好胚盤胞は, ガード ナー分類3BB 以上とした.

【結果】
プラリエ摂取前後における正常受精率は69.7%,73.3%,Day3良好 胚 率 は 66.5 %,64.1%,Day5/6胚 盤 胞 発 生 率 は 53.2 %,55.0%, Day5/6良好胚盤胞発生率は 22.3%,27.3%であった.摂取前後に有意 差を認めなかった.次に,40歳以上患者のプラリエ摂取前後における 正 常 受 精 率 は 67.4%,74.1%,Day3良 好 胚 率 は 73.8%,71.6%, Day5/6胚盤胞発生率は 39.4%,45.2%,Day5/6良好胚盤胞発生率は 15.2%,20.5%であった.40歳以上でも有意差を認めなかったが, 摂 取後に正常受精率,Day5/6胚盤胞発生率,Day5/6良好胚盤胞発生率 が上昇する傾向があった.

【考察】
プラリエ摂取により, 特に40歳以上患者では, 有意差は認められな いものの正常受精率,胚盤胞発生率,良好胚盤胞発生率が上昇する傾 向があった.これらの上昇傾向は,プラリエの成分に含まれている種々 の抗酸化物質の働きによると判断される.プラリエ摂取は, 卵質低下 を最小限に抑え,胚培養成績の維持向上,ひいては児の獲得に繋がる 可能性があると考えられる.しかし, 今回の検討は摂取前後での胚培養成績の比較であり, 摂取期間や客観的なバイオマーカーの測定等, より詳細な検討が今後必要である.

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