Papers and Abstracts

論文・講演抄録

プロゲステロン膣坐薬別のHRT−ET周期での血中プロゲステロン濃度測定の必要性

学術集会 一般演題(口頭発表)

2019年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:藤岡 美苑・泉 陽子・清水 純代・石橋 里恵・田口 美里・林 綾乃・植松 亜也佳・平田 貴美子・中西 桂子・後藤 栄

後藤レディースクリニック

Abstract

【目的】
近年,HRT-ET周期(HRT周期)にプロゲステロン(P)の膣坐薬を用いる場合には血中P値(P値)の測定は不要という報告があるが, 当 院は HRT周期にP 値を測定し膣坐薬の適量を再決定することは有用 であると報告し,SEET日(D2又は D3)とET日(D5又は D6)にP値を測定し,膣坐薬の増量を決定している.本研究では P 膣坐薬の種類が違う場合でも同様の結果となるのか, ウトロゲスタン膣用カプセル(USP)とルティナス膣錠(LSP)を用いて, 各使用HRT周期でのP値と妊娠成績の関連性を後方視的に検討した.

【方法】
当院初回 ET かつ SEET 法を併用し, 良好胚盤胞を凍結融解胚移 植した HRT周期を対象とした.HRT周期は月経開始2日目よりエスト ラジオールを開始し,15日目よりP 補充を開始した.良好胚盤胞は day5でGardner 分類 G3AAまたはG4以上とした.

〈検討1〉 2012年1月~ 2019年4月に,USP(1200mg/日)を使用した794 周期のうち,SEET日とET日に P 値<9ng/ml だった 41周期(A 群), SEET日にP値<9ng/mlかつET日にP値≧9ng/mlだった72周期(B群), SEET日にP値≧9ng/mlかつET日P値<9ng/mlだった48周期(C 群), SEET日とET日にP値≧9ng/mlだった633周期(D 群)に分け比較した.

〈検討2〉 2015年9月~ 2019年4月にLSP(300mg/日)を使用した108周 期のうち,SEET日にP 値<9ng/mlかつET日にP 値≧9ng/mlだった 12周期(E 群),SEET日とET日にP 値≧9ng/mlだった 96周期(F 群) に分け比較した.

【結果】
〈検討1〉 A,B,C,D 群間で平均年齢に有意差はなかった.臨床妊 娠率は A 群39.0%(16/41),B 群58.3%(42/72),C 群56.3%(27/48), D 群61.0%(386/633)で D 群がA 群に比べ高率(P<0.01)であった.流 産率は12.5%,9.5%,18.5%,20.2%で4群間に有意差はなかった.

〈検討2〉 E,F 群間で平均年齢に有意差はなかった.臨床妊娠率は E 群25.0%(3/12),F 群40.6群(39/96)で有意差はなかった.流産率は 0.0%,23.1%で有意差は認められなかった.

【考察】
USP周期ではSEETとET両日にP値が≧9ng/mlだった群が両日に P 値が<9ng/mlだった群より臨床妊娠率が有意に高かったことより, USPを使用した HRT周期の妊娠率とP 値は関連性があり,SEET日 および ET日にP値を測定することは有用であると示唆された.LSP周 期では SEET日および ET日にP 値による妊娠成績の有意差は認めら れなかったが,さらに症例数を増やして検討をする必要がある.

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