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[ 柳町隆造賞 ]
O-11 マウスにおける鉄欠乏は卵胞発育不全による雌性不妊を引き起こす

年次大会 一般演題

2020年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 藤内 慎梧 1),河端 茜 1),島田 昌之 2),山下 泰尚 1)

Abstract

【目的】

鉄 欠 乏 は 妊 娠 期 の 胎 児 の 発 育 や 正 常 な 出 産 に 影 響 を 与 えると 知 ら れ ているが,卵胞発育期,排卵期への影響は明らかになっていない.  当グループでは卵胞発育期のブタ卵胞液に,鉄の輸送タンパク質のトラン スフェリンが血中の 4倍以上もの高濃度で蓄積することを見出した.  本 研究では,卵巣における鉄の役割を調べる目的で,低鉄飼料を給仕し た 鉄 欠 乏モ デル マウスを 用 いて, 鉄 が 卵 巣 機 能 へ 果 た す 役 割 を 検 討し た.

【方法】

実験1. 3週齢のC57BL/6雌マウスに,3週間通常飼料を給餌した Normalマウス,低鉄飼料を3週間給餌したLow F(e LF)マウスを作製 し,血清および卵巣中の鉄量,性周期変動,妊娠率を調べた.

実験2. 鉄欠乏による卵胞発育への影響を調べる目的で,発情休止期または PMSG 刺激後48時間(h)の卵巣切片を HE 染色し,卵胞数を調べた. さらにNormalおよびLFにおける卵巣の卵胞発育マーカー(Fshr, Cyp19a1,Ccnd2)のmRNA発現および卵胞発育を誘導するエストロ ゲン(E2)量を測定した.

実験3. Normal および LF から排卵卵子を回収し,排卵数,受精率および胚盤胞率を調べた.

実験4. 離乳後6週間 飼育した Normal マウス,6週間飼育した LF マウスおよび,3週間飼育 したLFに通常飼料をさらに3週間給餌したLF Rescu(e LFR)マウス を作製し,Normal,LF,LFR から回収した血清中の鉄量,性周期 変動,妊娠率が鉄の補給により回復するか調べた.

【結果】

実験1. 血清と卵巣中の鉄量はLFで有意に低い値を示し,低鉄飼料 給餌により鉄欠乏が誘導されることが明らかになった.  Normal では発 情休止期,発情前期,発情期,発情後期と6日平均で規則的な性周期 が認められたが,LF の性周期は発情休止期から全く進行しなかった. また,Normalではすべての個体が妊娠したが,LFでは全く妊娠に至らなかった.

実験2. 発情休止期のLFの卵巣では Normalと比較して 二次卵胞数は高い値を示したが,胞状卵胞数は低い値を示した.  さら にPMSG刺激48h後の後期胞状卵胞数もLFにおいて有意に低い値を示した.  卵巣のFshr,Cyp19a1,Ccnd2 mRNA発現とE2量はLFに おいて有意に低い値を示した.

実験3. Normalと比べ LF では,排卵数, 受精率,胚盤胞率は有意に低い値を示した.

実験4. 血清中の鉄量が LFRでNormalと同程度まで回復し,LFRの性周期,妊娠率は, Normal と同レ ベ ル ま で 回 復 した .

【考察】

本 研 究 に より, 鉄 欠 乏 条 件 は 卵 胞 発 育 不 全 を 呈 し , 卵 成 熟 を 著 しく 低下させることが明らかになった.  鉄を含む飼料で 3週間飼育すると鉄欠乏による性周期の停止や妊娠率の低下が回復したことから,貧血により損なわれる 卵 巣 機 能 は , 患者への 鉄剤の補 完 に より 回 復 す る と 考 えられた.

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