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O-18 精液の温度低下による精子の運動率及びSMIの低下があった場合の加温の有用性

年次大会 一般演題

2020年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 阪本 なつき1),佐藤 学1),中岡 義晴1),森本 義晴2)

Abstract

【目的】
人工授精や体外受精などを行う場合,夫の都合により自宅から精液を持参することも多い.また新型コロナウイルス感染症の蔓延により極力来院を減らすために自宅から精液を持参するケースが増加していると思われる.日本は季節ごとに外気温の変動が大きく,特に冬季には低温になるため精液を入れた容器に何らかの対処をしていない場合は低温に曝され精子の運動率は低下する.しかし,低温暴露後の精子運動性の復元ができれば治療キャンセルや受精法変更などのリスクを回避できる可能性があるため,今回は低温暴露による精子の運動性低下のリカバリー方法として低温精液への加温の有用性を検討した.
【方法】
患者同意のもと,2019年10月~ 2020年3月に当院で精液検査のためにクリニックで精液を採取した余剰精子(精液量2.0 ml 以上,総精子濃度1500万以上及び運動率40%以上)を対象とした.総精子数,運動率,SMI 及びエオジン染色による生存率の計測を行った.

(検討1)まず精液を3等分し,1つはコントロールとして3時間室温静置した.残り2 つは4℃の条件下に2時間静置し総精子数,運動率及びSMI 及びエオジン染色による生存率の計測を行った.その後37℃のインキュベータ内にて1時間加温した加温群と室温(26℃)にて静置した室温群に分けた.1時間後,加温群と室温群の総精子濃度,運動率,及びSMIの計測を行い,加温で状態が復元するか検討した.

(検討2)検討1終了後に加温群,室温群,コントロールを15分300Gで密度勾配遠心(DGC)後,回収ペレットを培養液で遠心洗浄し,総精子数と運動率を比較した.
【結果】
(検討1)4℃暴露後の運動率,SMIならびに生存率はそれぞれ有意に低下した(P<0.01).加温群の運動率とSMIは4℃暴露後に比べ,有意に回復した(P<0.01).一方で,室温群の運動率は有意に回復しなかったものの,SMIは有意に回復した(P<0.05).

(検討2)DGC 後の運動率は, コントロールに比べ室温群で低下した(52.1 % vs. 72.2 %,P<0.01).加温群とコントロールで差はなかった(58.2% vs. 72.2%).
【考察】
低温精液への37℃加温は室温よりも有用である可能性が示唆された.しかし,完全に復元することは難しく生存率も低下していることから精液の低温暴露を少なくする工夫が好ましいと考えられた.

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