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PGT-A 現状と今後の展開

桑原 章

2020年度 年次大会-講演抄録 | 包括的な着床前診断・出生前診断の今後の展開

学会講師 : 桑原 章

Abstract

着床前胚異数性検査(PGT-A)は,ARTにおける妊 娠率を高め,流産率を減少させる画期的な技術とし て,生殖補助医療に携わる多くの専門家から期待さ れている.  一方で,日本産科婦人科学会「着床前診断に関する 見解」は,着床前診断は「重篤な遺伝性疾患を診断す る以外の目的に使用しない」と定義し,将来予想され る遺伝子スクリーニングを防止すると解説している (2019年6月改訂).

「5. 診断情報および遺伝子情報の管理
診断する遺伝学的情報は,疾患の発症に関わる遺伝子・染色体に限られる.遺伝情報の網羅的なスクリーニングを目的としない.目的以外の診断情報については原則として解析または開示しない.また,遺伝学的情報は重大な個人情報であり,その管理に関しては「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」および遺伝医学関連学会によるガイドラインに基づき,厳重な管理が要求される.」

遺伝学的解析手法の発展の結果,現在,着床前診断は遺伝子情報を解析するPGT-Mと,染色体の量を解析する PGT-A/SR に大きく区 別 さ れ て い る. PGT-Mは,遺伝医学,医療倫理の両面から高度なプ ロフェッショナリズムが求められ,そのあり方を改 めて見直す時期となっている.一方,PGT-Aは流産防止や一定期間内の生児獲得率に寄与することが期待される生殖医療の新しい技術として,科学的検討 が今も尚,必要とされている.日本産科婦人科学会 倫理委員会は2017年から2019年にかけてPGT-Aに関する探索的パイロット試験を行い,2020年からは 現行見解および細則(下記参照)を守りながら,徳島大学病院において研究倫理審査およびゲノム倫理審査を行った上で,臨床研究として多施設共同研究を進めており,現在,データの蓄積が行われているところである. PGT-A/SRの実施には生殖医療と遺伝, 両方の知識を兼ね備えた専門職によるカウンセリング,ART と遺伝学的解析の両面での精度管理が必須となる. 今回の講演では,倫理的検討課題にも触れつつ,特 に日本産科婦人科学会倫理委員会が実施している PGT-A臨床研究と諸外国の現状,そして今後の課題 に関する議論を深めたい.

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