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レスキューICSI における判断のタイミングと成績

鈴木亮祐

2021年度 年次大会-講演抄録 | 日本臨床エンブリオロジスト学会 「授精法のブレイクスルーを考える」

学会講師 : 鈴木亮祐

Abstract

近年,体外受精(c-IVF)症例における低受精や完全受精障害の回避を目的として,媒精から数時間後に受精の兆候がみられなかった卵に対して顕微授精(ICSI)を行うレスキューICSI(r-ICSI)が行われている.
当院では,精液所見や過去の治療歴より,c-IVFでは受精卵の確保が難しいと判断された場合や患者がICSIを希望した場合を除いて,r-ICSIを前提としたc-IVFを媒精法の第一選択としている.また,当院では第2 極体(2PB)の有無を受精兆候の指標としてr-ICSIを行っているが,受精兆候は必ずしも受精を正確に示しているわけではなく,受精予測精度が低ければ人為的
な多前核胚を作出してしまう恐れがある.したがって,r-ICSIを行う上で受精予測精度の向上が課題となる.
r-ICSIの導入にあたり,まず初めにr-ICSI 施行のタイミングを検討する必要がある.当院にて媒精後6 時間の2PBの有無を確認し,1PB 卵を1時間後に再確認したところ,およそ40%の1PB 卵が遅れて2PBを放出していた.このような結果を踏まえて,当院では媒精後7時間以降にr-ICSIを施行している.

r-ICSIは低受精や完全受精障害を回避することで利用可能胚数の増加をもたらし,患者利益に貢献することは明白である.一方で,業務負担が増えることを懸念して導入に踏み切れない施設も多いだろう.胚培養士の業務効率を考慮すると,できるだけ早期に媒精を行い,業務時間内にr-ICSIの有無を判断し施行することが望ましい.当院ではタイムラプスインキュベーターの導入により,採卵翌日の受精確認の時点で前核が消失している受精卵に対しても,正確な受精判定を行えるようになった.よって,受精確認のタイミングを考慮した媒精を行う必要がなくなり,早期にr-ICSIを施行することが可能となった.
また,2PBを受精兆候の指標としているが,2PBであったにもかかわらず前核を形成しない卵がみられることがある.これは,2PBを指標とした受精予測には限界があり,改善の余地があることを示している.近年,r-ICSIでの紡錘体観察は受精成績の向上に有用であることが報告されている.当院においてもr-ICSI 施行時に2PB 卵の紡錘体を観察したところ,およそ30%に紡錘体が観察され,そのうちおよそ90%は不受精であった.そこで紡錘体可視の2PB 卵に対してr-ICSIを施行したところ,およそ85%が正常受精した.2PBと紡錘体観察を指標とした受精予測は,より正確な不受精卵の判別を可能にし,受精予測精度を向上させた.
r-ICSIを前提としたc-IVFの導入は,不必要なICSIを減らすことで患者の経済的な負担を軽減するだけでなく,胚培養士の業務効率を向上させる.本講演では,当院の成績を示しながらr-ICSIの有用性をお伝えしたい.本講演が皆様のr-ICSIの導入や業務効率改善の一助となれば幸甚である.

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