Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-12 当院における日産婦PGT-Aパイロット研究出生児1歳半までの追跡調査

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:三村 結香1)・小林 亮太1)・水野 里志1)・福田 愛作1)・森本 義晴2)

1) IVF 大阪クリニック, 2) HORAC グランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
PGT-A多施設共同研究に先立ち実施されたパイロット試験におい
て,PGT-A実施群と非実施群の症例あたりの生児獲得率に差は見られなかったが,PGT-A実施群は胚移植あたりの妊娠率と流産率の改善が示された.一方で,PGT-Aは特有の胚操作技術が必要で,児への影響や胎盤重量の変化,産科合併症の増加が懸念されている.このため,安全性を検証するために児の発育調査を行うことは非常に重要であるが,本邦における出生児とその発育に関する報告はまだない.本研究では,PGT-Aパイロット試験出生児のデータを,当院通常ART出生児および厚生労働省の大規模調査のデータと比較することにより,PGT-Aの児への影響を検証した.
【方法】
検討①として,パイロット試験にてPGT-Aを行い出産に至った10児(PGT-A 群),同一期間内に単一凍結融解胚盤胞胚移植により出生した119児(ART 群)を対象とした.PGT-A 群とART 群の出生重,身長,先天異常および産科合併症をアンケートにより調査し,両群間で比較を行った.検討②として,PGT-A 群の1歳半健診時の体重,身長,新たに指摘された異常の有無について追跡調査を行った.体重,身長は厚生労働省身体発育データ(平成22年乳幼児身体発育
調査)にあてはめ男女別に比較した.
【結果】
検討①:PGT-A 群 vs ART 群で, 体重(3196.6 ± 434.9g vs3044. 2±467. 5g), 身長(49. 7±1. 9cm vs 48. 8±2. 7cm),胎盤重量(554.7±136.5g vs 596.9±116.6g),先天異常(0%(0/10) vs 3.3%(4/119)),産科合併症(40.0%(4/10) vs44.5%(53/119))となり,全ての項目において両群間で有意な差を認めなかった.
検討②:PGT-A 群の1歳半健診時の体重,身長は幼児身体発育調査のパーセンタイル曲線の3-97%内に位置した.また,新たな異常の報告はなかった.
【考察】
PGT-A特有の胚操作による産科合併症の増加や胎盤重量の変化が懸念されたが,検討①ではこれらを含め児の発育に関して,ART群と比較しても有意な差を認めなかった.さらに1歳半健診時の発育調査より,1.5歳までの発育についても影響がないと考えられた.アンケート調査は任意のため時間経過に伴い患者ドロップアウトによる
データの信頼性が問題となる.今後も全例のデータを調査することは
PGT-Aを評価するうえで重要であると考える.

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