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卵巣移植 ~国内外の比較~

京野廣一

2022年度 年次大会-講演抄録 | シンポジウム2「卵巣移植 ~世界の現状からみたわが国の課題~」

学会講師 : 京野廣一

Abstract

卵巣組織凍結(OTC)のEndpointは卵巣組織移植(OTT)後の健児の出産である.世界ではOTC/OTTにより2004年以降,200例以上の出産報告があり,徐々にその臨床的有効性が示されつつある.OTC/OTTの領域を牽引する欧州5 施設の285 例の成績(2021年)では,移植当たりの妊娠率37%(106/285),生産率26%(75/285)と報告されている.また,米国の単施設の報告では13 例のOTT 実施後,10 例が自然妊娠し,妊娠率77%(10/13),生産率69%(9/13)であり,国内の出産例は早発卵巣不全に対する2 例である.ここで,国内のOTCに関する懸念点である凍結法について改めて取り上げたい.世界でOTT 後の出産が報告された症例のうち,97%以上は緩慢凍結法によるものであるが,Sanadaらによる2011-2015 年の国内アンケート調査では,27 施設中25 施設でガラス化法によるOTCが採用されている.122 例のOTC 実施,及び7例(4施設)のOTT 実施が報告されたが,妊娠例は0 例,詳細は不明である.また,重松・高井(2022年)の報告においても,OTC実施232 例,妊娠0 例とされている.ただ,OTT 後の採卵で「採卵できた卵胞・卵子の由来は不明」であり,OTT 後の妊娠で「真の意味での卵巣組織移植の有効性を実証するまでには至っていない」と同グループの報告もあり,移植した卵巣からの卵子による妊娠か否かの判断も曖昧なままである.2021年4月,国による小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業が開始された.日本では明確なエビデンスの無いまま,多くの施設でガラス化法が採用され,今も実施され続けている.ここでいったん立
ち止まり,日本でOTC/OTTを実施された方々の検証,ならびに各ガイドライン策定の経緯を学び,これからの日本の進むべき方向を決定するべきではないだろうか?
また,OTC/OTT 実施後の妊娠が移植した卵巣組織由来の卵子による妊娠である証明はOTC/OTTのエビデンス構築のために重要である.そこで,これまでのOTC/OTTによる妊娠出産例から抜粋した必要不可欠な項目を記載する.

① OTCの適応,② OTC 時年齢,③ OTT 時年齢,④ OTC方法(Cryosupport=Ova Cryo Device TypeM®,Cryotissue, SF法),⑤ OTC 時の卵胞密度,viability test,悪性腫瘍細胞の再移入の検査,⑥原疾患治療の詳細(手術,化学療法,放射線療法など),⑦患者
の妊娠希望と腫瘍専門医の移植許可,⑧移植部位,⑨移植切片数(サイズ,卵胞密度),⑩移植決定時の血中FSH,LH, E2, P, AMH,AFC,月経,排卵の有無,無月経の期間),⑪ OTT 時の卵巣残存(原始卵胞の有無を確認するための生検)の有無や卵管の疎通性とpartnerの精液所見,⑫移植後の定期的なホルモン検査(LH,FSH,E2,P)と移植部位からの卵胞発育(USG),⑬月経や移植部位からの排卵(USG,E2,P)の有無,⑭妊娠(自然妊娠 or IVF妊娠:β-hCG,USG),出産と児の情報,⑮母児の継続的なフォローアップ,⑯ OTT 後の卵巣機能の持続期間
これらが適切に記録されれば,OTC/OTTによる妊娠出産が移植卵巣組織切片からの卵子であることを立証するために有効となり得る.本講演では,上述したOTC/OTT 実施の根本的な課題や今後の解決策について概説したい.

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