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培養環境におけるミネラルオイルの役割と クォリティーコントロールの要点

八尾竜馬

2022年度 年次大会-講演抄録 | 日本臨床エンブリオロジスト学会「培養環境を考える」

学会講師 : 八尾竜馬

Abstract

ミネラルオイルは,石油を精製することで得られる常温で液状の炭化水素類の混合物である.無色澄明でにおいや味がなく,安全性が高いことから,軟膏やクリーム,湿布剤などの医薬品,ベビーオイルやハンドクリームなどの化粧品,食品製造機械の潤滑油など,安
全性に配慮が必要な種々の製品に多用されている.
ミネラルオイルを用いた着床前胚のマイクロドロップ培養法の歴史は古く,1960 年代前半に発案され(Tarkowski, A. K., Nature, 1961; Brinster, R. L., Exp Cell Res., 1963; Gwatlin, R. B. L., PNAS, 1963),その有効性が報告されている.培養液をミネラルオイルで覆うことで浸透圧やpH変動を抑制し,コンタミネーションを防止できる.また,マイクロドロップ中で胚培養するとオートクライン,パラクライン因子の拡散が抑制され,発生率が向上すると考えられている(Wale, P. L., & Gardner, D. K., Hum. Reprod. Update, 2016).その他にも微小環境に配偶子や胚を留めておけるため顕微操作や観察が容易になるといった利点があり,多くの不妊クリニックはミネラルオイルを用いている.一方,ミネラルオイルの品質にはばらつきがあり,胚発生を阻害する場合があることが報告されている(Sifer, C., et al., Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol., 2009; Morbeck, D. E., et al., Fertil. Steril., 2010).その原因として,ミネラルオイル中の不純物の関与や(Fleming, T. P., et al., Fertil. Steril.,1987),過酸化による経時的な品質低下が挙げられている(Otsuki, J., et al, Fertil. Steril., 2007).すなわち,生殖補助医療を実施する際は,高純度のミネラルオイルを選択し,過酸化が進まないよう適切に管理することが肝要である.
そこで本講演では,我々が構築・運用しているミネラルオイルの純度と過酸化の評価を紹介した後,劣化を予防するための保管法の要点を実際のデータを交えて論ずる.また,培養液の浸透圧やpHの変化をできる限り抑制するには,どのようなミネラルオイルを選択
し,どのように使用すれば良いか議論したい.

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