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悪性リンパ腫で,ガラス化法による凍結卵巣組織移植後に 妊娠・出産となった1 例

原 鐡晃

2022年度 年次大会-講演抄録 | シンポジウム2「卵巣移植 ~世界の現状からみたわが国の課題~」

学会講師 : 原 鐡晃

Abstract

最新のメタアナリシス(Hum Reprod Update, 2022; 400-416)によると,世界中で卵巣組織移植(OTT)を受けた少なくとも547名の女性の予後として,184 名の女性が妊娠し,189人の生児が誕生,凍結卵巣組織による生児獲得率は28%と報告された.わが国の卵巣組織凍結(OTC)は200 例を超えるが,OTT 後生産例に関しては,OTT11例で4例が妊娠し,うち2 例が計3 回の健常児を出産したことを金森らが初めて報告した(本年度日産婦日本語ポスター95).原疾患はすべて乳がんであった.この度,悪性リンパ腫化学療法前にガラス化法でOTCを行い,原疾患治療後OTTを行い,ARTにより挙児獲得となった1例を
経験したので報告する.

患者は初診時34 歳,3 妊0 産.既往歴として,X-1年,子宮頸部円錐切除術(病理検査Ib1),その後結婚.同年,ロボット支援腹腔鏡下広汎子宮頸部切除術(倉敷成人病センター).X年縦隔原発大細胞型B 細胞リンパ腫のため広島大学病院受診,妊孕性温存目的に
て当科紹介初診となった.DA-EPOCH 療法予定で,猶予期間2 週間と短期間のため十分なIC 後,OTCとした.腹腔鏡下に,周囲癒着がない右卵巣を摘出し,超急速ガラス化法にて薄切皮質15片(1切片10×10×1mm)を凍結した.
化学療法後寛解状態となり,2年間の避妊後血液内科および産婦人科で妊娠許可となり,X+3 年当科再診した.月経は28日周期で,月経3日目,AMH 0.27ng/mL,FSH 9.4 mIU/mlL,LH 4.0 mIU/mL,E2 9.2 pg/mLであった.OTT 前に採卵を試み,5 ヶ月間に自然・低刺激周期4回,アンタゴニスト法1回の計5回卵巣刺激を行ったが,2回は採卵キャンセル,2回は卵子回収できず,卵子回収できた1回も変性卵であった.
以上の経過から残存卵巣から成熟卵子回収は困難と判断し,①子宮頸癌再発徴候がなく,2)MRD検索として①原発悪性リンパ腫発生部位は縦隔で卵巣からは遠隔であり,②摘出卵巣の免疫染色で,CD3, CD20,CD79a 陽性細胞は認めず,悪性細胞遺残の可能性は
低いと判断しOTTの適応とした.X+4年腹腔鏡下に,残存左側卵巣に卵巣組織9片を同所性移植した.凍結卵巣組織片を融解後,3片ずつ皮質面を合わせて縫合連結後,腹腔内に導入し,卵巣を長軸に沿って切開し,皮質面が表になるように切開面に配置し縫合固定した.手術時間219 分,出血量20gと少量であった.卵巣組織片にはHE 染色で多数の原始卵胞を認めた.OTT54日後に月経再開,OTT90日で排卵を認め,hot flushも軽快した.その後,3 回の排卵を確認後,卵巣刺激を開始した.アンタゴニスト法2回,自然周期・低刺激法4 回行い,分割期胚4 個(4G1, 8G1, 9G1,10G1)を凍結した.ホルモン補充周期で融解胚移植を
行い,2回目に化学妊娠したが挙児獲得には至らず,再度,自然・低刺激で採卵し新鮮分割期胚(10G1)を移植したが着床しなかった.その後,自然・低刺激で採卵し,新鮮胚盤胞移植(5AA)を行ったところ妊娠が成立した(胚移植後12日目hCG 787mIU/mL,OTT 後
1004日).

胎児発育および胎児心拍確認後,周産期センター紹介.妊娠36 週4日に選択的帝王切開術で女児(体重2828g,Ap:8/9,臍帯動脈pH7.348)を出産した.
移植前に排卵は認め,同所性移植のため,採卵できた卵胞の由来は不明で移植切片由来卵子の妊娠とする根拠はない.しかしながら,OTTにより凍結可能胚を採卵できた周期は有意に増加しており(p<0. 05),機序は不明だが卵巣の内分泌環境がOTTにより改善さ
れたと考えられる.OTTが卵巣の内分泌環境に与える影響は,今後の重要な検討課題である.

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