Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-32 人工授精の妊娠率と子宮内フローラ検査結果の関連性

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:吉田 敏哉1)・田中 克2)・野手 健造1)・長谷川 麻理1)・坂井 和貴1)・荒井 渉2)・桜庭 喜行2)・伊木 朱有美1)・鍋田 基生1)

1) つばきウイメンズクリニック, 2) Varinos 株式会社

Abstract

【目的】
近年,それまでは無菌だと考えられていた子宮内にも細菌が存在
することがわかった.また,子宮内細菌叢(子宮内フローラ)と不妊症との関連性が指摘されており,特に反復着床不全の症例では子宮内フローラが乱れていることが多いと報告されている.しかし,一般不妊治療における子宮内フローラの研究報告は極めて乏しい.本研究では,人工授精(AIH)の妊娠率と子宮内フローラ検査結果の関連について後方視的に検討した.
【対象と方法】
インフォームドコンセントのもと,2018年10月から2019年12月までに当院にてAIHを実施し,臨床妊娠の成否が得られている985周期
を対象とした.他院にてAIH 既往のある症例および38歳以上の症例を除外し,2018年10月以降初めてAIHを行った症例に限定して解析を行った.AIH 以前に子宮内膜を採取し,次世代シークエンサーを用いて子宮内フローラを解析した.Lactobacillus属およびその他の子宮内局在細菌とAIH 妊娠成否の関連性を検討した.
【結果】
AIH妊娠群と非妊娠群のLactobacillus属の占有率は各々90.2%と71.7 %であり, 妊娠群で高い傾向にあった(p=0.058).
Lactobacillus 属占有率が90 % 以上(LDM; Lactobacillusdominated
microbiota) の群と90 % 未満(NLDM; non-Lactobacillus-dominated microbiota)の群に分けると,AIH 妊娠率はLDM 群で14.0%,NLDM 群で3.7%であった(p=0.260).また,ROC 解析によりLactobacillus 属占有率カットオフ値を98.5 %に設定すると(p=0.071),従来値(90 % ;p=0.260)と比べAIH 妊娠成否を予測する上でより有用である可能性が示唆された.また,検出された各種子宮内細菌の解析結果は,非妊娠群ではPrevotella 属( 占有率2.8 % ; p <0.001),Dialister 属( 占有率0.6 % ;p=0.001),Megasphaera 属( 占有率2.5 % ;p=0.023),Peptoniphilus属(占有率0.1% ;p=0.041)で有意に占有率が高かった.
【考察】
一般的なAIH 臨床妊娠率は約8.3%とされているが,本研究では
38歳未満かつLDMの症例について臨床妊娠率は14.0%と高かった.
また,非妊娠群で有意に占有率が高かった4属はいずれも細菌性腟
症との関連が報告されており,抗菌薬やラクトフェリン投与などの治
療介入が望ましいと考えられた.

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