Papers and Abstracts

論文・講演抄録

―原著― 精子ヒアルロン酸結合能と精子DNA損傷の関連およびヒアルロン酸結合精子使用顕微授精の有用性について

学会誌 掲載論文

2023年度 学会誌 掲載論文日本IVF学会雑誌 Vol.26 No.2 78-84

著者:夏目明子1)・北原彩花1)・岩本祐佳1)・水田真平1),2)・大原康弘1)・松林秀彦1),2)・石川智基1),2)

1)リプロダクションクリニック大阪,2)リプロダクションクリニック東京

Abstract

ヒアルロン酸結合能のある精子は成熟率増加とDNA損傷率(DFI)低下が報告されているが,ヒアルロン酸結合精子を用いた顕微授精(PICSI)の有用性については明らかでない. 今回, ヒアルロン酸結合能とDFIの関連, PICSIによる培養成績を後方視的に検討した.【方法】2023年2〜5月に当院で採卵を行った47周期327個の卵子を対象とした. 精子調整前後のDFIおよびヒアルロン酸結合率を測定し, 同一周期の卵子を従来の顕微授精(ICSI群)とPICSI群に分け, 培養成績(受精率, 胚盤胞率, 良好胚盤胞率)を比較した.【成績】ヒアルロン酸結合率は原精液(57.9%)と比べ精子調整後(85.5%)に有意に増加し(P<0.01), DFIは原精液(14.7%)と比べ調整後(4.9%)に有意に低下した(P<0.01). 原精液においてヒアルロン酸結合率とDFIに有意な負の相関を認めたが, 培養成績は両群間で有意差を認めなかった.【結論】ヒアルロン酸結合精子はDNA損傷と逆相関するが, 培養成績には影響を及ぼさなかった.

キーワードヒアルロン酸結合能, ICSI, 精子DNA損傷, Physiologic intracytoplasmic sperm injection

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