―総説― 卵巣凍結前の化学療法が卵胞数および卵巣移植に与える影響
2023年度 学会誌 掲載論文|日本IVF学会雑誌 Vol.26 No.2 18-26
著者:脇本 裕・荻野奈々
兵庫医科大学医学部産科婦人科学講座
Abstract
卵巣凍結(OTC)による妊孕性温存は化学療法前が推奨されてきたが、卵巣摘出手術が適用できない場合や卵巣転移のリスクを有する患者では化学療法後のOTCも考慮される。現在、卵巣移植(OTT)による出産例は200例をこえ、化学療法後のOTCがOTTに与える影響が明らかになってきた。当科の自験例から化学療法後では血清AMH値が低い場合でも、それと原始卵胞密度の相関は認められず、卵巣内の原始卵胞の存在が多数確認され、OTCが妊孕性温存の手段として効果があることが示された。最近の海外の報告でも、化学療法後のOTTによる妊娠成績が化学療法の既往のない患者に非劣性であることが示されている。OTCの臨床応用から四半世紀が経過し、その有効性が広く認識され、化学療法後であっても支持されてきている。本稿では、OTC前の化学療法が卵胞数およびOTTに与える影響について当科の治験例と最新の文献から考察する。
キーワード:化学療法、原始卵胞、微小残存病変、卵巣移植、卵巣凍結
ランニングヘッド:化学療法が卵巣に及ぼす影響