Papers and Abstracts

論文・講演抄録

日本IVF学会、25年の歩みと未来

森本 義晴

2022年度 年次大会-講演抄録特別講演-3 本学会は4 名のメンバーによって創設されました。まず『大阪IVF 懇話会』を私と石川元春先生が立ち上げ、 大阪の大和屋という料亭で第1回目の会合を開きました。さらに、兵庫県では大谷徹郎先生と山下正紀先生 が『兵庫IVF 懇話会』を立ち上げたのです。実は、その頃私と山下、大谷両先生は六甲アイランドに住んでい るという偶然もあって、初期の段階で二つの懇話会を一つにしようじゃないかと話がまとまり、翌年にはIVFの創始者であるRobert Edwards 教授のおられたBourn Hall ClinicからPeter Brinsden院長をお迎えして、第2回の『大阪・兵庫IVF 懇話会』が開催されました。その当時は、IVF 技術そのものが真新しく、未知 の分野で満ちていて、これに携わろうとする者全てが好奇心と冒険心に満ちていました。丁度、大学間のIVF妊娠出産の成功レースが東北大学の勝利で決着がつき、この技術が私たち実地医家の中で躍動を始めた時期でした。『大阪・兵庫IVF 懇話会』は計8回続きました。

学会講師:森本 義晴

Abstract

本学会は4 名のメンバーによって創設されました.まず『大阪IVF 懇話会』を私と石川元春先生が立ち上げ,大阪の大和屋という料亭で第1回目の会合を開きました.さらに,兵庫県では大谷徹郎先生と山下正紀先生が『兵庫IVF 懇話会』を立ち上げたのです.実は,その頃私と,山下,大谷両先生は六甲アイランドに住んでいるという偶然もあって,初期の段階で二つの懇話会を一つにしようじゃないかと話がまとまり,翌年にはIVFの創始者であるRobert Edwards 教授のおられたBourn Hall ClinicからPeter Brinsden院長をお迎えして,第2回の『大阪・兵庫IVF 懇話会』が開催されました.その当時は,IVF 技術そのものが真新しく,未知の分野で満ちていて,これに携わろうとする者全てが好奇心と冒険心に満ちていました.丁度,大学間のIVF妊娠出産の成功レースが東北大学の勝利で決着がつき,この技術が私たち実地医家の中で躍動を始めた時期でした.『大阪・兵庫IVF 懇話会』は計8 回続きましたが,なんと言ってもこの時代のハイライトは,1996年第5 回大会を有馬温泉で催したことです.その当時,私たちの分野では第一世代といえる故加藤修先生,高橋克彦先生そして田中温先生が,学会で熾烈な医学的,
科学的論争を繰り広げておられました.この方々を一堂に集めて,関西では有数の温泉地で夜通し戦わせたらさぞ面白いだろうというアイディアで行われました.加藤修先生は文字通り朝まで議論を続けられたそうです.

さて,学会はいよいよ第2ステージへと進みます.手弁当で創ってきた『大阪・兵庫IVF 懇話会』は,参加者も増え全国レベルの会へ発展させようということで『IVF 研究会』という名称に変更されました.この研究会の講演会のポリシーは,「面白くない話をする方は呼ばない」,「自分が研究せず机上の空論を展開する方は偉い人でも呼ばない」でした.また,必ず一人は海外からその時の旬の先生を招聘しました.その厳格な講演者選択が功を奏して,参加者はぐんぐん増えてゆきました.この時代で特筆すべきは淡路島夢舞台国際会議場で細井美彦先生によって行われた第4 回大会でした.この会では,私たちの悲願であった英国のRobert Edwards 教授を招聘できたことです.Edwards 教授は世界中から引っ張りだこの売れっ子スーパースターでしたから,参加者の期待と興奮は相当なものがありました.その折り,Edwards 先生には柳町隆造先生とともに本研究会の顧問を引き受けて頂きました.故鈴木秋悦先生,入谷明先生,久保春海先生と本会はゴージャスなの顧問団に恵まれてきました.さて,その後研究会の名称は自然発生的に『日本IVF 学会』となりました.これは,名実ともに全国レベルの学会として認知されてきた所以であると考えられます.また,2012 年には日本IVF 学会雑誌第1号が発刊され,栁田薫先生が初代編集長,そして2015 年には髙見澤聡先生が第二代編集長として多大な貢献をされ,今では数少ないこの
分野の和文誌の一つに成長しております.
そして,ついに2016 年11月1日には任意団体から『一般社団法人日本IVF学会』として法人格が認定されました.これで当会は,法的にも一人前の資格を得ました.この法人化には,当初より事務局を担当して頂いているヒューマンリプロ・Kの久保忠彦氏のご努力に負うところが大であります.

時代は移り,いよいよ永年私が務めた理事長職を塩谷雅英現理事長が継承されました.塩谷理事長は誰が見てもパワフルな人格者です.それを,アイディアマンの古井憲司副理事長が補佐し,若手の有能な常務理
事が活躍する盤石な執行部ができました.また,昨年日本生殖医学界理事長をお務めの大須賀穣先生に副理事長として本会運営に参画頂いたことは本会にとって慶事であります.対外的にも,不妊治療保険化では
塩谷理事長が中心となって全国をまとめるというめざましい活躍をしております.
また,海外交流も盛んとなっております.我が国を代表するARTを主とする学会として,米国生殖医学会でJSAR Symposiumを開催,豪州生殖医学会とは定期交流を行っております.

ここまでの本学会の発展に貢献したのは,理事会,評議員会の先生方,そして記念に残る学術集会を主催頂いた歴代の会長の先生方です.中でも福田愛作先生には3 回もの素晴らしい会を主催頂きました.そして,忘れてならないのは事務局の久保忠彦氏,敦氏,また,こよなく学会を愛してサポートして頂いた企業の方々のご尽力の賜です.本学会の発展に寄与された全ての方に深謝申し上げます.

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