Papers and Abstracts

論文・講演抄録

精子選択時にSpermMobilを用 いたTESE-ICSIの発生成績

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2016年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:中山 順樹・石川 聖華・向江 真璃・佐久間 友香・中村 好佑・加賀 朝子・荒井 勇輝・毛利 汐菜・白築 章吾・原 利夫

はらメディカルクリニック

Abstract

【目的】

生殖医療の発達により,無精子症の患者でも精巣から採取した(TESE)精子を使用することで,挙児を得ることが可能となった.しかし,TESE精子を用いたICS(I TESE-ICSI)では,運動精子を見つけることが困難な症例が多々あり,稀にまったく観察されない症例もある.当院ではこのような症例の場合,GM501 SpermMobi(l SM)を用いて精子の運動を促し,精子の選択を行っている.このSM がICSI 後の胚の培養成績にどのような影響を与えるかを後方視的に検討した.

【方法】

2014年7月~ 2016年6月の間にTESE-ICSIを施行した39症例を対象とした.採卵後の卵丘卵子複合体をHyaluronidaseで処理し,ピペッティングにより卵丘を除去した.卵子の成熟確認後,凍結しておいたTESE 精子を融解し,ICSIに供した.精子の選択をする際,運動精子が確認された場合はそれらの精子をPVP 内に移し,不動化後に穿刺を行った(Non-SM 群:NSM 群).30分以上の観察の後運動精子が確認されなかった場合は,SMを精子懸濁液と混和し,10分間静置した.その後運動が確認された精子をICSIに供した(SM 群).それぞれの群のICSI後の受精率,胚盤胞形成率,良好胚盤胞率を比較した.

【結果】

卵丘除去時,成熟が確認された卵子は168個あり,NSM 群は68個(22症例,平均年齢39.3歳),SM 群は97個(18症例,平均年齢37.5歳)であった.SM 群のICSI後の受精率(70.0%)は,NSM 群のそれ(81.0%)と比べて若干低い傾向であった(有意差なし).SM 群のICSI後の胚盤胞形成率(42.0%),良好胚盤胞率(25.0%)は,NSM 群のそれら(33.8%,24%)と同等であった.SM 群の受精後の胚盤胞形成率(60%),良好胚盤胞率
(36%)は,NSM群のそれら(41%, 29%)と比べて若干高い傾向であった(有意差なし).

【考察】

本検討において,SMを用いてTESE-ICSIを行った場合,SMを使用しなかった場合に比べて,受精率が低い傾向にあった.SM を用いた症例は,融解後の運動精子が確認できず,SMを使用しなかった症例に比べて精子の状態が不良であると考えられる.そのため,受精率に影響したのかもしれない.一方で,受精後の胚盤胞形成率,ならびに良好胚盤胞率は,SMを使用した場合の方が,SMを使用しなかった場合に比べて高い傾向が見られた.SMを使用することで,精子選択に要する時間が短縮される傾向があり,採卵後から顕微授精を行うまでの時間も短縮され,胚盤胞形成に影響を与えた可能性が考えられる.今後は運動精子が確認された場合にもSMを用いることで,SMを用いなかった場合と比べてTESE-ICSI 後の発生が改善するかを検討する.

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