Papers and Abstracts

論文・講演抄録

当院における医学的介入による造精機能低下患者の現状

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:原 利夫・中山 順樹・石川 聖華・向江 真璃

はらメディカルクリニック

Abstract

【目的】
悪性腫瘍に対する治療の進歩に伴いその治療成績が向上してきたものの化学療法,放射線療法などにより造精機能の低下あるいは廃絶が起こりうることも明らかである.
このような悪性腫瘍治療による造精機能の低下から将来の挙児希望を確保する方法として各種治療開始前の精子凍結保存が有効である.
現在,当院では首都圏の数か所の施設から治療前の精子凍結保存を受け入れており,当院での取り組みと現状を報告する.

【方法】
2012年から2016年末までの5年間の紹介施設数,紹介患者数,平均年齢,当院初診から凍結開始までの平均期間,疾患別分類,保存期間,廃棄数,凍結保存精子を用いた治療成績などを検討した.
また,精子凍結保存に関わる諸問題に関しても考察を加えて報告する.

【結果】
2012年から2016年末までの悪性腫瘍紹介患者数は441症例(治療開始前345症例,治療開始後96症例),平均年齢38.3±8.2歳(未成年17.1±2.5歳)当院初診から初回精子凍結保存までの期間・2時間~ 4日程度,紹介患者の疾患分類は上皮性悪性疾患22%,非上皮性78%,平均凍結保存本数5.9本/人,廃棄数16症例(本人死亡9・廃棄希望7)凍結精子使用により顕微授精2症例(妊娠に至らず).

【考察】
2012年から2016年末までの紹介患者は441症例であった.紹介方法は原疾患の担当医師がネットで当院を検索したり,すでに紹介実績のある担当医からの個人的紹介である場合がほとんどである.
悪性腫瘍では,第一に疾患の治療が最優先されるため治療に伴う造精機能の低下という副次的問題がしばしば看過される.
そのため,凍結保存の機会を逸してしまったり,治療開始後ですでに造精機能が廃絶してからの紹介も経験する.
また,血液悪性腫瘍の場合,診断から治療開始までの期間が短く十分な凍結本数が確保できない,既婚者の場合には,妊娠時期の選択など疾患治療(寛解期)の予後なども十分な検討を加える必要がある.
原疾患の担当医・カウンセラーなどと密な連携が必要であり,このような長い時間を要する治療には公的な機関の必要性を痛感する.

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