Papers and Abstracts

論文・講演抄録

精液処理法がARTへ及ぼす影響 について

学術集会 一般演題(ポスターセッション)

2017年度 学術集会 一般演題(ポスターセッション)

発表者:大川 莉歩・藤田 陽子・鈴木 望文・浅見 真依・知念 日菓利・榎本 恵・石井 鈴奈・濱田 道子・堀川 道晴・武谷 雄二

ウイメンズ・クリニック大泉学園

Abstract

【目的】
高度生殖医療(assisted reproductive technology;ART)では,射出精液中から運動精子を回収して媒精に用いる.
精子の質の低下は,受精やその後の胚発生能に負の影響を及ぼすことから,良好な精子を効率的に回収して媒精に用いることが必要である.
精子回収法は,一般的に,遠心法,密度勾配遠心法(以下Isolate 法),swim-up 法が用いられているが,これらの方法を組み合わせることでより質の良い精子を回収し,媒精に用いることができるのではないかと考えた.
そこで今回の検討では,swim-up 法の前に遠心を行う遠心/swim-up 法と,Isolate を行うIsolate/swim-up 法を用いて精子を回収し,ARTへの影響について検討を行った.

【対象・方法】
対象は,2010年1月から2017年3月までに,当院でARTを施行し,女性年齢が39歳以下,ART 施行回数3回目以下の症例とした.
遠心/swim-up 法を行った症例は150症例,Isolate/swim-up 法は787症例であった.
それぞれの方法にて運動精子回収し,顕微授精(以下ICSI)もしくは通常体外受精(以下con.-IVF)に用い,精液処理法別に受精率,胚盤胞到達率,良好胚盤胞発生率を比較した.また回収した精子を3 時間培養後,精子DNA 断片化率を比較した.
統計はχ2乗検定,一元配置分散分析を用い,p<0.05を有意差有りとした.

【結果】
ICSI症例における遠心/swim-up 法,Isolate/swim-up 法の受精率は78.4%,74.7 %であり差は認めなかったが,胚盤胞到達率は33.0%,56.5%,良好胚盤胞到達率は25.0%,48.2%であり,いずれもIsolate/swim-up 法において有意に高い値となった(p<0.05).
con.-IVF 症例では,それぞれ,受精率は49.6 %,66.2 %,胚盤胞到達率は33.1%,61.2%,良好胚盤胞到達率は26.5%,51.4%であり,これらすべてにおいてIsolate/swim-up 法で有意に高い値となった(p<0.05).
遠心/swimup法,Isolate/swim-up 法で回収した精子の3時間培養後のTUNEL陽性率は,それぞれ10.3±0.05%,1.2±0.01%であり,Isolate/swimup法において有意に低い値となった.

【考察】
ICSI,con-IVFともにIsolate/swim-up 法を行った症例は,胚盤胞率,良好胚盤胞到達率が有意に高かった.
Isolate 法は精子のDNA 断片化率が低いことから,選択的に成熟精子を回収し,精漿中の死滅精子や白血球等をより効率的に除去することができる手法であると考えられる.
その結果より質の良い精子の回収が可能となり,ARTの成績向上につながったと解釈される.

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