Papers and Abstracts

論文・講演抄録

EmbryoScope+™は魅力的なバージョンアップをした

学術集会 一般演題(口頭発表)

2017年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:菊本 晃代・渡邉 英明・長谷川 久隆・塚本 佳奈・鈴木 亮祐・小林 充・石橋 和見・京谷 利彦・河田 真智子・齋藤 優・小林 淳一

神奈川レディースクリニック

Abstract

【目的】
近年,タイムラプスインキュベーターの有用性数多く報告されている.
当院でも2015年よりEmbryoScopeTM(ES)を2台導入し全周期においてD0~ D1の期間培養することで見逃されていた早期前核消失胚も観察でき,受精率が向上することを報告した.
2017年より新たにEmbryoScope+TM(ES+)を5台導入し,全周期全培養過程をタイムラプスインキュベーターにより培養可能とした.
ES+はESと比較して2倍以上の15症例,各16胚(最大240胚)を培養することが可能になっている.
さらには扉開閉時にも必要なディッシュのみが開口部に移動する構造になり培養スペースへの空気の流入を抑え,培養環境の変化をより軽減する設計となった.
今回ESからES+への移行に際し両インキュベーターの培養成績を比較検討した.

【方法】
2017年1月~ 3月の間にICSI 施行時にMⅡが6個以上得られた症例,またはcIVFにて5時間の短時間媒精後に2pb 胚が6個以上得られた症例,126周期,成熟卵1213個を対象とした.
媒精後同一患者の胚を2群に分けES,ES+にて培養を行った.
検討1)ES 群,ES+群とし,D3良好胚率,D5胚盤胞到達率,D5良好胚盤胞率,D6胚盤胞到達率を比較した.
検討2) ES 群,ES+群をそれぞれ患者年齢が40歳以下と41歳以上に分けD3良好胚率,D5胚盤胞到達率,D5良好胚盤胞率,D6胚盤胞到達率を比較した.

【結果】
検討1) D3良好胚率,D5胚盤胞到達率,D5良好胚盤胞率,D6胚盤胞到達率はES 群で69.4%,64.1%,39.8%,9.2%,ES+ 群で70.1%,67.6%,41.1%,6.5%でありESとES+の培養成績に有意差は認められなかった.
検討2) D3良好胚率,D5胚盤胞到達率,D5良好胚盤胞率,D6胚盤胞到達率は40歳以下ES 群,ES+群で各成績に有意差は認められなかった.
41歳以上ES 群で71.3%,56.7%,24.7%,4.0%,41歳以上ES+ 群で73.3%,61.6%,39.4%,4.0%でありD5良好胚盤胞のみES+ 群が有意に高い値となった.

【考察】
今回の検討では両タイムラプスインキュベーターの全体としての培養成績に有意な差は認められないものの少なくともES+はESと同等もしくは同等以上の培養環境を作ることができることが示された.
また,ES+は培養可能な症例数,培養胚数ともにESよりも増加し,培養環境を保つためのCO2flow,N2flowも減少していた.
このことからES+はES に比較しコストパフォーマンスも向上したと考えられ,有用なバージョンアップを行ったと考えられる.

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