Papers and Abstracts

論文・講演抄録

MHHに対し自院男性不妊外来でのhCG+FSH併用療法にて自然妊娠に至った1例

学術集会 一般演題(口頭発表)

2018年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:鍋田 基生1)・大内 茉湖1)・松本 綾香1)・長谷川 麻理1)・坂井 和貴1)・伊木 朱有美1)・岩端 威之2)・岡田 弘2)

1)つばきウイメンズクリニック
2)獨協医科大学埼玉医療センター

Abstract

【緒言】手術時の下垂体部損傷に起因する低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症(male hypogonadotropic hypogonadism : MHH)による無精子症患者に対し自院男性不妊外来にてhCG+r-hFSH併用療法を行い自然妊娠に至った1例を経験したので報告する。

【症例】28歳男性(妻26歳)。2011年4月、近医脳神経外科において下垂体近傍の頭蓋咽頭腫に対して経鼻的経蝶形骨洞的腫瘍摘出術が施行された。手術後より汎下垂体機能低下症の診断にて副腎皮質ホルモンおよび甲状腺ホルモンの補充療法が開始され、現在も継続されている。術後、射精障害を認め、近医泌尿器科にてテストステロン補充療法により射精可能となった。2015年12月、挙児希望目的に妻が産婦人科クリニックである当院を受診した。当院での精液検査にて無精子症であったため、当院男性不妊外来を受診した。精巣容量は左右ともに8mLと矮小であった。血液検査はLH 0.8mIU/mL、FSH 2.6mIU/mLと正常範囲であった。近医にてテストステロン補充療法を継続されており、テストステロンは4.21ng/mLであった。LH-RHテストでは反応性を認めなかった。以上より下垂体部損傷による後天性MHHと診断された。2016年9月よりテストステロン補充療法からhCG+r-hFSH併用療法に変更したところ、3か月後の11月末には精液検査で正常基準値の精子が確認され、さらに3か月後の2017年2月には、自然妊娠が成立した。2017年11月、3138gの女児を経腟分娩した。母児ともに経過良好である。

【考察】通常は若年のMHH症例には、挙児希望が無くとも将来の挙児希望を考慮して、生理的なhCG補充療法でまず治療を開始して男性化を促し、挙児希望が出た時にhCG+r-hFSH併用療法に切り替える。MHHは治療可能な男性不妊症であり、本症例でもhCG+r-hFSH併用療法の有効性が確認された。挙児希望の無精子症の中にMHHが潜んでいることがあり、男性不妊専門医による早期の診断、治療が重要である。また産婦人科クリニックにおける男性不妊外来の重要性、およびアンドロロジーに精通した泌尿器科医との連携の必要性が認識された。

【結語】MHHによる無精子症患者に対し自院男性不妊外来でのhCG+r-hFSH併用療法にて自然妊娠に至った1例を経験した。

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