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新時代の ART はどこへ向かうのか?

石原 理

2019年度 年次大会-講演抄録 |

学会講師 : 石原 理

Abstract

ルイーズ・ブラウン誕生から 40 年が過ぎ, 新技術であった顕微授精やガラス化法による胚凍結なども含め, 生殖医療(ART)は, 世界的に日常化・一般化したといえる.今日に視座をおく時,新時代のARTは, これから先どこへ向かうのだろうか?
地球規模でARTを見るならば,治療周期数など「数的拡大」は, 当面継続することが常識的には予想できる.なぜなら世界最大の人口を持つアジア地域,そして急速な経済発展を実現しつつあるアフリカ地域において,これまでARTへのアクセスを持たなかった人々が多数存在するからだ.
一方,アジア・アフリカ地域を含め,「数的拡大」について懸念せねばならない最大の課題は,実はそれぞれの国における国内経済格差である.北中南米諸国において低所得層がARTへ十分なアクセスを持たない現状は,アジア・アフリカの多くの国において,何もしなければ同様な未来を招いてしまう潜在的危険性を示唆している.そして,この課題は,振り返ってみれば,私たちの住んでいる日本にも,かなり当てはまっているという現実がある.
それでは,ARTの「質的拡大」, すなわち画期的な技術革新や治療パラダイムを根本的に変えてしまう薬剤,機器などの出現は,今後あるのだろうか.これを予測することは難しい,というより,とてもできるはずがないというべきだ.そして,「質的拡大」=「ARTの成功」に結び付く可能性をもつ技術として, 今日もっとも注目されているのは, 胚の「遺伝情報」に フ ォ ー カ ス し た PGT と 胚 発 育 の「 形 態 と 時 間 」にフォーカスしたタイムラプスである.これらは,いわばひとつひとつの胚についての,「静的背景」と「動的背景」情報の取得であると, ほぼ言い換えることができる.しかし,さらに言うならば,いずれも方法論としては,「情報量の拡大」→「確率と統計に基づくアルゴリズム」に基づく展開にすぎないとして, まとめることも可能なのだ.
本講演では, これらの認識を前提として,ART の安全性と有効性・有用性の評価,そして継続的モニタ リングの重要性をご理解いただくために必要な,最新 情報をお知らせする予定である.

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