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拡張した孵化胚盤胞をガラス化 凍結する際に行う至適収縮処理法 の考察

年次大会 一般演題

2019年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 大久保 毅,林 輝明,恩田 知幸,松尾 涼子,田口 智美, 大見 健二,瀬川 智也

Abstract

【目的】
胚盤胞のガラス化において,胞胚腔内液は氷晶形成によるダメージ要因 になるため,胞胚腔内外において凍結液との効率的な置換が胚の生存率お よび妊娠率の向上に繋がる.そのため胚盤胞をガラス化凍結する直前に, ピペッティングによる人工的な収縮(PAS)処理を施して胞胚腔内容積を小さ くすることが融解後の高い生存率,妊娠率を得るために重要である.しか しPAS処理による栄養外胚葉細胞(TE)のダメージは胚盤胞径が大きくな るほど有意に高くなることが分かったため,TEダメージを出来るだけ少なく するためには胚盤胞径が大きいほど慎重なPAS処理が要求される.そこで 我々はより妊孕性の高い胚を得るためのPAS法について検証するために, 拡張期の孵化胚盤胞をPAS処理した際の収縮形態とダメージ率および妊 娠成績に関する関連性を後方視的に解析した.

【方法】
2017年3月より2019年2月にかけて採卵を施行した1,341周期を対象とした.良好胚盤胞(TE数12個以上)まで発育した拡張期胚盤胞1,598個は全 てレーザーによる人工的孵化処理を行った後にPASを施行し,cryo top法 によるガラス化凍結を施行した.PAS前の胚盤胞径が平均以上(200µm以 上)の孵化胚盤胞739個のうち,PAS後に胞胚腔が完全収縮した群(完全 PAS)と胞胚腔が完全に収縮していない群(不完全PAS)についてTEダメー ジ率と移植あたりの妊娠成績を比較した.

【結果】
胚盤胞径が200μm以上の拡張期孵化胚盤胞にPASを施行した結果, 完全PAS群が610個,不完全PAS群が129個であった.完全PAS群およ び不完全PAS群における凍結前のTEダメージは42.8%(261/610)および 20.2%(26/129)であり,完全PAS群で有意に高いTEダメージが認められ た(P<0.001).

同様に融解後生存率は99.2%(605/610)および99.2%(128/129),妊娠率 は43.0%(260/605)および54.7%(70/128)であり,妊娠率は不完全PAS群 が有意に高かった(P<0.05).

【考察】
PASを行うことは融解後の高い生存率を得るために必須の前処理である ことは間違いないが,数回のPASを行っても胞胚腔が完全に収縮しない例 も少なからず見られる.しかしながら,今回のような特に胚盤胞径の大き い胚では,過度のPAS処理によってTEに不必要なダメージを与えている 可能性が考えられた.従って,胚盤胞径に合わせた適切な内径のピペット による穏やかな操作はもちろんのこと,不完全PASであってもTEダメージ を最小限に止めることの方が妊娠率のさらなる向上に繋がると示唆された.

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