Papers and Abstracts

論文・講演抄録

0-26 レルゴリクスはARTにおいてセトロレリクスの代替薬となり得るか

学術集会 一般演題(口頭発表)

2020年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:矢野 未来1) ・辻 勲1) ・前田 優磨1) ・大垣 彩1) ・水野 里志1)・菊川 忠之1)・福田 愛作1)・森本義晴2)

1)IVF 大阪クリニック 2)HORAC グランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】

生殖補助医療(ART)における調節卵巣刺激において, 従来からGnRHアゴニスト製剤であるセトロレリクスが用いられている.近年,子宮筋腫の治療薬として,新たなGnRHアゴニスト製剤であるレルゴリ クスが開発された.レルゴリクスは経口薬で利便性が高く,安価であることから, セトロレリクスの代替薬となる可能性がある.本研究では,レルゴリクスがARTに応用できるかを検討することを目的とする.

【対象と方法】

当院で2019年6月から2020年7月の期間に,GnRHアンタゴニスト法による調節卵巣刺激を用いて採卵し, 顕微授精を施行した患者148症 例162周期を対象とした.セトロレリクスを皮下注射した72症例76周期(セトロレリクス群)と, レルゴリクスを経口投与した81症例86周期(レ ルゴリクス群)のART 治療成績を後方視的に比較検討した.レルゴリ クスとセトロレリクスは, 主席卵胞が14mmに達した時点から排卵誘起 の当日または前日まで連日投与した.本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.

【結果】

採卵直前のLH値は, レルゴリクス群がセトロレリクス群より有意に低値であった(2.1±2.0 mIU/mL vs 3.3±5.0 mIU/mL, P<0.05).な お, 排卵後のため採卵がキャンセルになった周期は両群ともなかった. 受精率は, レルゴリクス群がセトロレリクス群より有意に高率であった (83.9% vs 80.2%,P<0.05).レルゴリクス群とセトロレリクス群におい て, 採卵数(11.1±7.8個 vs 14.2±9.0個), 成熟卵数(9.0±6.3個 vs 11.0±7.4個), 胚盤胞到達率(64.7% vs 63.2%), 良好胚盤胞到達率 (54.7% vs 50.2%),新鮮胚移植の臨床的妊娠率(63.5% vs 56.9%)は 有意差を認めなかった.

【結論】

レルゴリクスを用いたGnRHアンタゴニスト法によるART 治療成績 はセトロレリクスとほぼ同等であったことから, レルゴリクスは ARTに 応用できる可能性が示唆された.ただし, 本研究は症例数が少なく, 後方視的検討であるため,さらなる検討が必要である.

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