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O-10 卵管膨大部特異的に発現する Lipocalin-2は精子運動性と受精を促進する

年次大会 一般演題

2020年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 李周蓮 ,岡本麻子 ,島田昌之 ,山下泰尚

Abstract

【目的】

哺乳動物の受精過程の解明には,卵子と精子のみならず卵管の 3方向のコミュニケーションを解明する必要がある.  当グループでは,卵巣内で卵成熟を誘導する因子として同定した Neurotensin (NTS)とその 受容体 (NTSR1) が卵管にも発現することを見出し,NTS 依存的に卵 管で 発 現 する 受 精 促 進 候 補 因 子 をトラン スクリプトーム 解 析 に より探 索した結果,分泌型糖タンパク質の Lipocalin-2(LCN2)の発現を見出し た.  本研究では,卵管で発現するLCN2 の発現変化および局在,また LCN2 がマウス精子の運動性および受精に及ぼす影響を調べた.

【方法】

実験1. 無刺激(NS)および PMSGとhCGを投与したC57BL/6雌マウスの各時間の卵管を回収し,Lcn2 mRNA発現およびLCN2タンパ ク質発現を調べた.  また,NSおよびhCG刺激16時間 (h) 後の卵管の LCN2量を定量した.さらに NS および hCG 刺激16h 後の卵管峡部卵管膨大部でのLCN2の局在を調べた.  実験2. 精巣上体から回収した 精 子 を H T F 培 地( C o n t r o l 区 )と L C N 2 を 添 加 し た 区( L C N 2 区 )で 0 , 3 0 , 6 0 分 間 培 養 し , 受精能獲得の指標であるチロシンリン 酸 化を検 出 した.  実験3. Control区とLCN2区で0,15,30,60,90分間培養した精子を精子運動 解 析システム( C A S A )により運 動 解析を行った .   実 験4. Control区とLCN2区で60分間培養した精子を用いて体外受精を 行った.

【結果】

実験1. Lcn2 mRNA発現はNSと比べhCG刺激12,16,20h後の 卵管で有意に上昇しており,LCN2タンパク質発現はhCG刺激16h後 に上昇した.  またこの時のLCN2量は NSと比べ有意に増加していた. さらに NS および hCG 刺激16h 後の卵管峡部では LCN2 の発現はほぼ 認められなかった.  一方,hCG 刺激16h 後の卵管膨大部の卵管上皮細 胞においてLCN2を示す強いシグナルを検出した.  実験2. Control区 と比べ LCN2区で 30分間培養した精子においてチロシン残基のリン酸 化を示すバンドが強く検出された.  実験3. Control 区と比べ LCN2区で培 養した精子 に お い て , 精 子 の 運 動 率( 9 0 m i n )お よ び 良 好 な 運 動 精 子 率( 6 0 m i n )が 有 意 に 上 昇 し , 培 養 9 0 分 後 に お い て も L C N 2 区 の 精 子 は活発に運動していた.実験4. LCN2区の精子を用いて体外受精した ときの卵割率が有意に上昇した.

【考察】

卵管において発現するLCN2 は,排卵・受精期に卵管膨大部の卵管 上皮細胞特異的に発現することが明らかになった.LCN2 は精子の運 動性と受精率を向上させたことから,卵管膨大部特異的に発現する LCN2 は精子に作用し受精を誘導する因子であると考えられた.

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