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O-12 精子グルコース応答性に起因するRNAウイルス感作反応の動物種間差解析

年次大会 一般演題

2020年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 田口 新 1),近藤 希衣 1),辻田 菜摘 2),梅原 崇 2),島田 昌之 2),向田 哲規 1)

Abstract

【目的】

マ ウスや ブタ 精 子 は , 高 グル コ ース 環 境 で 嫌 気 的 解 糖 系 に より尾 部を激しく振 幅させ 受 精 能 獲 得 状 態となる. この 嫌 気 的 解 糖 系は ,R N A ウイルスに対する受容体であるTLR7/8 を活性化させることで抑制され, 精子は不動化する .  RNAウルス であるコロナウイルスやジカウルス などが,精液中や子宮,卵管でも検出されるという報告があることから, ウイルス 感 染および 培養液への混雑 が 精子の受精能獲得を抑制し , 受精障害を引き起こす可能性がある.  しかし,ヒトの射出精子において はグルコース濃度の違いが精子運動性に及ぼす影響は不明であり, TLR7/8 の役割も全くわかっていない.そこで本研究では,ブタ,ウシ およびヒト精子を用いて,グルコース応答性の違いを運動パターンから 解析し,その応答性の違いが RNAウイルス疑似感作反応に及ぼす影 響について検討した.

【方法】

ブタ,ウシおよびヒト射出精液を遠心分離し,HTF 培地で 2回洗浄 し た . 培 養 液 は 通 常 の H T F( グ ル コ ー ス 濃 度 2 . 8 m M )を コ ン ト ロ ー ル として,浸透圧を変化させずにグルコース濃度を 5mM,10mM,15mM に調整した.この培養液で精子を培養し,運動パターンを解析した. また,TLR7/8のリガンドであるR848を3nM,30nM添加し,その精 子 運 動 パ タ ーン に 及 ぼ す 影 響 を 解 析 し た .

【結果】

ブ タと ウ シ 精 子 は , グ ル コ ー ス 濃 度 依 存 的 に 直 進 速 度 が 低 下 し , 頭 部振幅幅と曲線速度が有意に増加するzig-zag 運動を示した. 高グルコース 環 境 で は ,ミト コ ン ド リ ア の 電 位 活 性 低 下 と 嫌 気 的 解 糖 系 の 活 性 上 昇 が 認 め ら れ た こ と , 嫌 気 的 解 糖 系 は 尾 部 に 強 局 在 して い た こ と から,グルコース濃度依存的に代謝機構とATP産生部位がシフトし, 運 動 パ タ ー ン が 変 化 す る こ と が 示 さ れ た . 一 方 , ヒト 精 子 で は , 1 検 体 は グル コ ース 濃 度 依 存 的 に 運 動 パ ターン の 変 化 が 認 めら れ た が , 他 の 13検体では,グルコース濃度の増加による影響は認められなかった. ブタ,ウシと一部のヒト精子では,TLR7/8 の刺激により精子運動パター ンが,頭部振幅が減少し,曲線速度が低下する結果,直進運動へと 変化した.  しかし,多くの症例では TLR7/8 による運動パターンの顕著 な影響は認められなかった.

【考察】

ブ タ 精 子 は 子 宮 内 に 直 接 射 出 さ れ る が , ヒト や ウ シ 精 子 は 膣 内 に 射 出され,子宮頚管を通過する必要がある.ウシとヒトの違いとして,子 宮 頚 管 粘 液 の グ ル コ ー ス 濃 度 は , ヒトで は 排 卵 期 に 低 値 で あ り , ウ シ では高値である.この違いと低グルコース反応性により,射出直後のヒ ト精子は直進運動を維持するようプログラムされており,zig-zag 運動 を誘導するのが難しい可能性がある.この抑制機構の解明と効率的な グルコース反応性獲得法の考案により,IVF の成功率向上に寄与する と期待される.

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