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O-14 凍結保存タンクの容量が大きいほど真空漏れを起こしても保存効果を長く保つことができる

年次大会 一般演題

2020年度 年次大会-一般演題 | 学術集会 - 一般演題(口頭発表)

発表者 : 水野 里志1),入江 真奈美1),小橋 朱里1),明角 一平2),福田 愛作1),森本義晴3),

Abstract

【目的】
ART 施設にとって凍結保存タンクの管理は極めて重要である.海外でのタンク事故が示すように,タンクに事故が起きた場合の被害は深刻である.しかし,タンクが破損した場合の対応について詳細な情報はない.これまでに,我々は,重大なタンク事故につながる真空漏れを起こしたタンクであっても,一定以上のLN₂残量があれば,凍結検体の保存効果が数時間維持されることを明らかにした.今回,我々は容量の異なる3 つのタンクを意図的に破損させ(真空漏れを誘起),タンクに起きる変化を経時的に観察することで,容量の違いが保存効果継続時間に与える影響を解析した.
【材料と方法】
10,20及び35 LタンクにLN₂を満タンまで充填し,真空弁に直径2㎜の穴をあけることで真空漏れを誘起した.真空漏れ後のLN₂残量及びタンク内の温度を1時間毎に測定することで,LN₂ の減少速度,温度が上昇するタイミングと-80℃に達する時間を比較した.なお,最初の一時間及び温度上昇が始まってからは15分毎に測定し,測定は温度が-80℃に達するまで行った.また,真空漏れ前のデータとして,それぞれのタンクで7日間,24時間毎に同項目を測定した.
【結果】
LN₂ の減少速度は10,20,35 Lタンクで,それぞれ4.6,4.5,2.8cm/hであった.全てのタンクで測定開始時の温度は-196℃であった.温度上昇は,10 LタンクでLN₂残量が1 cm ,20と35 Lでは0 cmになったときに始まった.10,20,35 Lタンクで温度上昇が始まった時間は6時間45分,8時間00分,11時間45分,温度が-80℃に達した時間は7時間54分,8時間41分,14時間14分であった.真空漏れを起こしていないタンクにおいて,10 Lでは2 cm,20と35 Lタンクでは4 cm,7日間でLN₂ が減少した.温度は全てのタンクで-196℃を維持していた.
【考察】
今回の検討で,真空漏れ後のLN₂減少速度は,10,20 Lタンクと比べて35 Lタンクのほうが緩やかであった.容量が大きくなるにつれて真空漏れ後からタンク内の温度上昇が始まる時間,さらに-80℃に到達するまでの時間が長くなり,タンク間で最大5時間40分の差が生じた.このように,タンクが真空漏れを起こした場合の保存効果継続時間は,容量が大きくなるほど長くなり胚の救出可能な時間に猶予が与えられることが示された.

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