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臍帯幹細胞馴化培地を用いた胚移植反復不成功例へのアプローチ

宮崎 薫

2021年度 年次大会-講演抄録 | シンポジウム「着床環境改善策を考える」

学会講師 : 宮崎 薫

Abstract

胚移植の失敗は,着床不全と初期流産の2つに分けて考えることができる.どちらの現象も,その要因は①胚の異常,②胚- 子宮内膜のクロストークの異常,③子宮内膜受容能の異常,そして④免疫調節の異常,の4つに分類される.着床率および生児獲得率を改善するため,この4つの観点からこれまでに様々なアプローチが試みられてきた.しかし,これらの試みをもってし
ても着床不全および流産に悩む患者は多い.従って,胚移植失敗例においてより成功率の高い治療法の開発が期待されている.子宮内環境は胚移植の成功率を大きく左右する.臍帯間葉系幹細胞馴化培地(UCMSC-CM)はin vitroや動物実験において創傷治癒の促進や筋萎縮の改善等の効果が報告されており,今後の臨床応用が期待される.UC-MSC-CMを子宮内に投与する事で,胚着床・妊娠継続に最適な子宮内環境を作成出来るのではないかと考えた.今回UC-MSCCMの基礎研究データに基づき,実際に患者の子宮内にUC-MSC-CMを投与した.UC-MSC-CMに含有される因子と,これを患者の子宮内に投与した際の臨床成績につき,ここに報告する.

【方法】
UC-MSCを入手後,培養と継代を繰り返し,継代数4-5にて馴化培地(UC-MSC-CM)を採取してサイトカインアレイで解析した.胚移植反復不成功(着床不全,生化学的妊娠,あるいは流産を含む)の既往がある患者を対象とし,凍結融解胚移植周期中の患者の子宮内腔へUC-MSC-CMを人工授精用カテーテルを用いて注入した.カテーテル挿入及び注入は,経腹超音波ガイド下に施行した.2017年1月~ 2021年3月に施行された胚移植のうち,UC-MSC-CM 投与周期(n= 300)と非投与周期(n = 769)を比較し,着床率,臨床的妊娠率,生化学的妊娠率,臨床的流産率に関して統計学的有意差が認められるか検討した.解析にはχ2 検定を用いた.

【成績】
UC-MSC-CMは血清含有培地と比較し,17 種類のケモカイン,24 種類の成長因子,13 種類の炎症性サイトカインを有意に多く含有し,その中にはLIFやGDF-15 等着床促進に関与する因子も認められた.臨床成績では,着床率(22.1% vs 35.7%),臨床的妊娠率(15.1% vs 28.0%), 臨床的流産率(69.0% vs36.9%)のいずれのパラメータにおいても非投与周期と比較して投与周期で有意な改善が認められた(p<0.01).患者年齢を39 歳未満と40 歳以上に分けた場合,いずれの年齢層でも上記パラメータの有意な改善を認めた.
【結論】
UC-MSC-CMは各種サイトカインを豊富に含有し,その子宮内投与は胚移植の成功率を改善する為に有用な治療法と考えられた.

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