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不妊症への支援に係る現行制度及び保険適用への流れ

涌井菜央

2021年度 年次大会-講演抄録 | ARTの保険診療化を考える

学会講師 : 涌井菜央

Abstract

令和2年10月,菅総理は所信表明演説において「不妊治療に対する経済的支援の所得制限を撤廃し,早急に保険適用を行うこと」そして「保険適用が実現するまでの間,特定不妊治療に対する助成措置を大幅に拡大すること」を明言され,以降「不妊治療の保険適用」は菅政権の基本的方針の1つとなっている.
子どもを持ちたいという方々の気持ちに寄り添い,不妊治療への保険適用を早急に実現するため,令和2年12月に閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」においても,令和3年度中に詳細を決定し,令和4年度当初から保険適用を実施することが明記された.
保険化の議論に先立ち,令和3 年1月以降に終了した特定不妊治療については,特定治療支援事業の対象者要件から所得制限を撤廃し,2回目以降の助成額についても15→ 30万円/回へと増額を行った.加えて助成を受けたのちに出産(妊娠12週以降に死産に至った場合も含む)した場合は,これまで受けた助成回数をリセットすることができるという規定を新設するなど,助成の拡大を実現した.

この経済的支援の拡充と並行し,これまで自由診療領域で発展してきた不妊治療領域の診療の実態を調査すべく,令和2年度子ども・子育て支援推進調査事業として「不妊治療の実態に関する調査研究」を行い,医療機関,不妊治療当事者及び一般モニターに聞き取り調査を行った.その結果も踏まえ,厚生労働科学研究において生殖医療のガイドライン原案の作成がなされた.その後,関連学会等の意見聴取を行い,最終的に日本生殖医学会が
これを承認し,令和3 年6月に一部が公開された.
策定された診療ガイドライン等を踏まえ,有効性・安全性等が確認された検査や治療等について,夏以降に中央社会保険医療協議会において議論を行うこととしている.また,有効性,安全性等について引き続きエビデンスの集積が必要とされたもの等については,保険外併用療養費制度(先進医療等)を活用するなど,国民が安心して不妊治療を受けられるよう,検討を進めていく.
一方,ガイドラインで推奨された医薬品については,有効性・安全性を確認した上で,公知申請(改めて治験を実施することなく公知該当として薬事承認を行うスキーム)も含めた所要の薬事手続きを得て,承認を行う予定としている.
不妊治療については,経済的,身体的のみならず,精神的負担も大きいことから,子どもを持ちたいと願う夫婦の希望に応えられるよう,不妊に悩む方への心理的な支援も重要と考えている.従来,不妊専門相談センターにおいて,不妊症や不育症について悩む夫婦等に対する相談対応や情報提供等を行っていたが,これに加え,令和3年度予算では,不妊症・不育症支援ネットワーク事業において,医療機関や,相談支援等を行う自治体,当事者団体等の関係者等で構成される協議会等を開催し,地域における不妊症患者への支援の充実を図ることとしている.更に不妊症・不育症におけるピアサポーター等の養成研修を実施し,社会としての理解の醸成を促している.
引き続き,子どもを持ちたいという方々の気持ちに寄り添い,その切実な願いに応えるよう,その支援に取り組んでまいりたい.
ART の保険診療化を考える

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