Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-24 チョコレート嚢胞の存在がART臨床成績に与える影響について

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:樽井 千香子1)・辻 勲1)・井谷 裕紀1)・水野 里志1)・重田 護1)・福田 愛作1)・森本 義晴2)

1) IVF 大阪クリニック, 2) HORAC グランフロント大阪クリニック

Abstract

【目的】
チョコレート嚢胞の存在がART 臨床成績に与える影響として,採卵数は低下するが,妊娠率に影響を及ぼさないと言われている.しか
し,これらの影響はチョコレート嚢胞が両側か片側か,またその大きさによって異なる可能性がある.そこで,本検討ではチョコレート嚢胞の存在がART 臨床成績に及ぼす影響を検討するため後方視的検
討を行った.
【方法】
2016年1月から12月の間に当院で初回の採卵を実施した569例(チョコレート囊胞合併患者は81例,非合併患者は488例)を対象とした.ART 臨床成績について,①チョコレート嚢胞の有無,②チョコレート嚢胞が両側か片側か,③採卵時のチョコレート嚢胞の大きさ,に分類し比較検討した.
【結果】
チョコレート嚢胞径の平均は23.3±9.68mm(9.0-60.0mm)あった.①チョコレート嚢胞の有無で比較した検討では,チョコレート嚢胞合併患者群と非合併患者群の比較では,採卵数(10.0±6.97 vs 10.1±7.22),卵成熟率(85.1% v s 8 1.9%),受精率(83.5% v s 8 1.5%),胚盤胞到達率(61.4 % vs 66.7 %), 臨床的妊娠率(58.9 % vs56.0%),生児獲得率(52.1% vs 47.9%)であり,両者に有意な差は認められなかった.②チョコレート嚢胞の側性別の比較では,片側群(73例),両側群(8例),非合併患者群の結果は,採卵数(9.8±7.00vs 1 1.3±6.62 v s 1 0.0±6.97), 卵成熟率(84.6 % v s 8 8.9 % v s81.9 %),受精率(84.0 % v s 8 0.0 % v s 8 1.5%),臨床的妊娠率(58.5% v s 6 2.5% v s 5 6.0%),生児獲得率(50.8% v s 6 2.5% v s47.9%)であり,3群間に有意な差は認められなかった.③採卵時のチョコレート嚢胞の大きさ別の検討では,40mm 未満群(74例)と40mm 以上群(7例)の結果は,採卵数(10.1±7.06 vs 9.0±6.90),卵成熟率(85.1% v s 8 5.2%),受精率(83.1% v s 8 9.1%),胚盤胞到達率(60.3% v s 7 1.4%),臨床的妊娠率(59.7% v s 5 0.0%),生児獲得率(52.2% vs 50.0%)であり,両者に有意な差は認められなかった.
【考察】
今回の検討では,チョコレート嚢胞の存在はARTの臨床成績に影響しないと考えられた.ただし,本検討のチョコレート嚢胞のサイ
ズの設定が限定的であるため,チョコレート嚢胞の側性や大きさのみならず数や治療歴も加え,その影響についてさらなる検討が必要である.

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