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卵巣組織移植 当院での経験から

塩田恭子

2022年度 年次大会-講演抄録 | シンポジウム2「卵巣移植 ~世界の現状からみたわが国の課題~」

学会講師 : 塩田恭子

Abstract

【はじめに】がん治療の進歩にがん治療はがんの治癒のみではなく,その後のQOLについても重要視されるようになった.その1つに妊孕性温存治療がある.若いがん患者等が希望をもって病気と闘い,将来子どもをもつことの希望を繋ぐ取り組みの全国展開を図ることを1つの目的とした小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業が2021年4月より開始し,今後さらに妊孕性温存療法を希望する症例が増加すると考えられる.米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでは,女性の妊孕性温存治療には推奨に胚凍結,卵子凍結,研究段階に卵巣組織凍結が挙げられている.このように,妊孕性温存治療として卵巣組織凍結は近年増加しているものの,まだまだ確立したものとは言えない.さらにはその凍結した卵巣組織を融解,移植をして,妊娠につなげた症例は,ごく少数にとどまる.今回当院で行った以下の卵巣組織移植症例2 例より,今後の卵巣組織凍結・移植について考える.

【症例1】18 才時に第7胸椎レベルの原始神経外胚葉性腫瘍のため手術.術後化学療法となる.化学療法1クール後腹腔鏡下に右卵巣を摘出時,緩慢法で29片に細切し,卵巣組織凍結を施行.化学療法終了後,月経発来なく,19 歳時よりホルモン療法を施行していた.25 歳で結婚し,挙児希望出現.左卵管間膜内に卵巣組織10片移植.卵巣組織移植後ホルモン療法下に卵巣刺激を行うも,反応せず.26 歳時に再度卵巣組織を移植することとした.8片を融解し,1片をさらに1/2に切断し,16片とした.左右の広間膜後葉を切開し,後腹膜内に5-0プローリンにて数珠状につないだ卵巣組織を8片ずつ移植した.術後卵巣刺激により卵胞発育しICSIを行うも2 回化学的流産となるが,挙児には至っていない.
【症例2】38 歳時に乳癌のため術前化学療法予定となる.妊孕性温存を希望して外来を受診.既婚であり,胚凍結を試みたが採卵できず.卵巣組織凍結を強く希望し,腹腔鏡下に左卵巣を摘出した.卵巣は年齢に比して小さく,14片にわけて緩慢法で卵巣組織凍結を行った.乳癌について化学療法,術後妊娠を考え,不妊治療を施行したが,早発卵巣機能不全と診断され,卵胞の発育なし.40 才時に卵巣組織移植希望となった.凍結した卵巣組織14片全部を融解し,5mm角に切断する.5-0プローリンにて6-7個を数珠状につなげ
たものを左広間膜後葉剥離部2連と右卵管間膜内に1連移植した.術後,何回か卵巣刺激を行うが,卵胞発育せず,採卵には至っていない.
【考察】2 例を通じ,いかに卵巣機能を維持できるよう卵巣組織凍結・移植を行うか,その技術を考えていく必要性を強く感じた.今回の2症例はともに緩慢凍結であるが,近年卵巣組織凍結もガラス化法による凍結が多く行われている.また移植の方法も,移植部位や切片の大きさなど様々な方法があり,今後どの方法がより卵巣機能を維持できるかを検討していく必要がある.

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