Papers and Abstracts

論文・講演抄録

O-35 microfluidic device回収精子の運動性の変化と精子周辺環境

学術集会 一般演題(口頭発表)

2021年度 学術集会 一般演題(口頭発表)

発表者:星野 由貴・長谷川 久隆・鈴木 亮祐・塚本 佳奈・菊本 晃代・小林 充・京谷 利彦・櫻井 友義・齋藤 優・小林 淳一

神奈川レディースクリニック

Abstract

【目的】
近年,遠心処理を行わない精子調整デバイスであるスパームセパ
レーター(microfluidic sperm separator:MFSS)が注目されている.本研究では従来のSwim-Up 法(SU)とMFSS 回収精子の運動性の経時的変化について検討し,その原因について考察した.
【方法】
当院にて2020年2月から9月の間に研究利用へのインフォームドコ
ンセントが得られた11症例を対象とした.
検討①:精液検体を2 つに分け,SUとMFSS(ZyMot )で調整し,調整後0h 〜2hおよび24hの運動性を比較した.
検討②:SUと比較し,MFSSで0h から24hにかけての運動率の低下率が顕著に高い4症例をHD 群,それ以外の7症例をLD群とし,2群間において①原精液,② SU 調整後の運動性を比較した.
検討③:SU・MFSSおよびMFSS-wash( MFSS調整後に洗浄濃縮を施行)の運動性の変化を比較した.さらに精漿混入の指標として酸化還元電位(ORP)を比較した.
【結果】
検討1:SUと比較してMFSSで,0h から24hにかけての運動率の
低下率は有意に高かった(40.8±20.5% vs 72.5±23.4 %,P<0. 01).
検討2: ①原精液において,HD・LD 群の間に運動率の差はみら
れなかったが,直線速度,曲線速度はHD 群で有意に高かった(P<0. 01).
② SU 調整後においては,両群の間に運動性の差はみられなかった.
検討3 :MFSS-wash調整24h後の運動率は,MFSSと比較して有意に高く,SUとは有意な差はみられなかった(MFSS-wash:65.7±24.1 %, MFSS: 22.4±22.3 %, SU: 36.4±25.5%, P <0.05).ORP はMFSS,MFSS-wash,SU の順に高く,3区すべてに有意差を認めた(MFSS: 68.3±17.4mV, M FSS-wash: 1 91.4 ± 19.3 mV, S U: 2 27.9 ± 10.9mV, P<0. 01).
【考察】
MFSS 調整24h 後に運動率が顕著に低下した症例は,原精液で精子の運動速度が高速であった.一方,原精液の精子の運動速度の違いによる調整24h後の運動性の差は,SUではみられなかった.
MFSS 調整後にwash 処理にて精漿成分を除去したことで,調整
24h後の運動率の低下を低減し,SUと同程度とすることができた.
以上のことから,精子高速運動性精漿の混入が,調整後の精子の
運動性へ影響を及ぼすことが示唆された.

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